哲学・思想

デリダは笑いと緊張の中で講義を進める

クリッピングから 藤原書店PR誌「機」2023年10月号(No.379) 「出版随想」 ▼A氏の訃報が先日届いた。 A氏とは、三十有余年前、小社出発前からの附き合いになる。 A氏は、拙と齢同年で、七〇年代後半に渡仏し、 苦学の後に、仏ボルドー大学教授の職を得た。 …

永井玲衣『水中の哲学者たち』(晶文社、2021)

クリッピングから 毎日新聞2023年3月27日朝刊 「メディアの風景」武田徹 若手研究者の哲学エッセー 活字に託す「対話」の場 東京都内の大型書店を訪ねて驚いた。 哲学関係の品ぞろえに予想以上の充実があったからだ。 特に「哲学」の棚に設置されていた 「哲…

その人に私が死なれる(鷲田清一)

クリッピングから 朝日新聞2022年4月16日朝刊 折々のことば(鷲田清一)2351 老いることは、 自分の付き合っている他人が死ぬことなんです。 他人の死を見送ることです。 鶴見俊輔 大切な人、親しい誰かの死は、私がその人を亡くすこと、 いいかえると私が自…

佐藤優『仕事に悩む君へ はたらく哲学』(マガジンハウス、2021)

シマオという佐藤優の分身が、 佐藤優に相談し質問する設定が秀逸だ。 『仕事に悩む君へ はたらく哲学』(マガジンハウス、2021)を読む。 仕事に悩む君へ はたらく哲学作者:佐藤優マガジンハウスAmazon(ブックデザイン/TYPEFACE イラストレーション/iziz…

人がもし毎晩同じことを夢見ていたら(パスカル)

クリッピングから 朝日新聞2021年9月25日朝刊 「折々の言葉」(鷲田清一)● 2155 人生は、定めなさがいくらか少ない夢である パスカル 人がもし毎晩同じことを夢見ていたら、 それは日頃じかに見ている物事と同じほどにリアルだろうと、 17世紀のフランスの…

池上彰/佐藤優『真説日本左翼史ー戦後左派の源流 1945-1960』(講談社現代新書、2021)

この二人の共著はほぼすべて読んでいる。 「なぜ、いま、二人がこのテーマを」と気になった。 池上彰/佐藤優『真説日本左翼史ー戦後左派の源流 1945-1960』 (講談社現代新書、2021)を読む。 真説 日本左翼史 戦後左派の源流 1945-1960 (講談社現…

若松英輔「100分de災害を考える」:池田晶子『14歳からの哲学』

Eテレ3月22日放送「100分de災害を考える」第4回(最終回)。 指南役・若松英輔は池田晶子『14歳からの哲学ー考えるための教科書』 (トランスビュー、2003)を取り上げた。 期待通り、力の籠もった講義だった。 100分de災害を考える 2021年3月 (NHK100分de名…

石井洋二郎/鹿島茂『ブルデュー「ディスタンクシオン」講義』を読む(月刊All Reviews)

「カフカ・ファンド」を使ってオンライン講座を申し込んだ。 <石井 洋二郎 × 鹿島 茂、石井 洋二郎『ブルデュー「ディスタンクシオン」講義』を読む> (90分/税込1,650円)。 ブルデュー『ディスタンクシオン』講義作者:石井 洋二郎発売日: 2020/11/27メ…

100分de名著/カール・マルクス『資本論』(講師:斎藤幸平)

1月4日から放送が始まった「100分de名著/資本論」。 講師・斎藤幸平が執筆したテキスト、番組での語りが明快で エッセンスが頭に入りやすい。 NHK 100分 de 名著 カール・マルクス『資本論』 2021年1月 (NHK100分de名著)作者:斎藤 幸平発売日: 2020/12/25メ…

矢野久美子『ハンナ・アーレント、あるいは政治的思考の場所』(みすず書房、2002)

仲正昌樹『悪と全体主義ーハンナ・アーレントから考える』 (NHK出版新書、2018)を読み、アーレントに興味を持った。 (2017年9月放送「100分de名著」テキストに加筆・再構成) 仲正の著書で弾みがつき、 矢野久美子『ハンナ・アーレント、あるいは政治的思…

仲正昌樹『悪と全体主義—ハンナ・アーレントから考える』(NHK出版新書、2018)

NHK Eテレ「100分de名著」は教養を深めるための森のような存在だ。 既に100本を超えた番組のアーカイブ周辺に関連書籍が多数出版され、 興味を持った著作とその周辺を、自分のペースで自在に散策できる。 ハンナ・アーレント『全体主義の起原』の回(未見)…

佐藤優『世界のエリートが学んでいる哲学・宗教の授業』(PHP文庫、2020)

なんだか面白そうなニオイがするから、 筑波大学での講義を「盗み聞き」してこよう。 佐藤優『世界のエリートが学んでいる哲学・宗教の授業』 (PHP文庫、2020)を読む。 世界のエリートが学んでいる哲学・宗教の授業 (PHP文庫)作者:佐藤 優発売日: 2020/08/…

お手本なしで生きていく精神はまねできなかった(長谷川宏)

クリッピングから 毎日新聞2020年8月25日朝刊 そこが聞きたい ヘーゲルと現代日本 哲学者 長谷川宏氏 難解と敬遠されがちなヘーゲルの著作を 理解しやすい日本語に翻訳した仕事でこの方の存在を知った。 コロナ禍で右往左往しがちな今、傾聴に値するインタビ…

吉本隆明『改訂新版 共同幻想論』(角川ソフィア文庫、1982/2020)

シェルパに恵まれると難解と言われている書物も最後まで読めるものだ。 吉本隆明『改訂新版 共同幻想論』(角川ソフィア文庫、2020)を読む。 道案内をしてくれたのはNHK Eテレ「100分de名著」7月講師・先崎彰容さんだ。 改訂新版 共同幻想論 (角川ソフィア…

100分de名著/吉本隆明『共同幻想論』(講師:先崎彰容/全4回)

NHK Eテレ「100分de名著」7月に放送した 吉本隆明『共同幻想論』(講師:先崎彰容)全4回(計100分)を見る。 NHK 100分 de 名著 吉本隆明『共同幻想論』 2020年 7月 [雑誌] (NHKテキスト)発売日: 2020/06/25メディア: Kindle版 テキストブックか…

そうだ、「講義めし」に切り替えよう!

今夜は19時30分から書評サイトAll Reviews友の会が 会員以外にも YouTube で無料生放送してくれる対談があります。 プログラムは仏文学者・鹿島茂さんと 倫理学者/日本思想史研究者・先崎彰容さんが語る「『共同幻想論』を読む」。 NHK Eテレ「100分de名著…

「100分de名著 吉本隆明 共同幻想論」(講師:先崎彰容)

家の近所には小さな本屋が2軒しかない。 ときたまウォーキングを兼ねて、 隣町の駅ビルに入っている三省堂書店S支店まで出掛ける。 片道25分前後のS川沿いコースを選ぶ。 今週からNHK Eテレ「100分de名著」吉本隆明『共同幻想論』 (全4回/講師:先崎彰容)…

佐藤優・香山リカ『不条理を生きるチカラ』(ビジネス社、2020)

議論が噛み合っているようでいて、 噛み合っていないところがあちこちで見つかる。 「不条理」に立ち向かう対論だから 案外それも著者たちの狙いだったのかもしれない。 佐藤優・香山リカ『不条理を生きるチカラ—コロナ禍が気づかせた幻想の社会』 (ビジネ…

富岡幸一郎『使徒的人間—カール・バルト』(講談社、1999)

この人の佐藤優さんとの対談本『<危機>の正体』がとても面白く、 これまで学んできた神学を整理するのに役立ったので連読した。 富岡幸一郎『使徒的人間—カール・バルト』(講談社、1999)を読む。 〈危機〉の正体作者:佐藤 優,富岡 幸一郎発売日: 2019/10…

柄谷行人『哲学の起源』(岩波現代文庫、2020)

柄谷行人さんの新しい文庫が出た。 書籍広告を引用する。 まったく新しい哲学史が見えてくる! 『哲学の起源』柄谷行人 アテネの直接民主制は、 古代イオニアのイソノミア(無支配)再建の企てであった。 社会構成体の歴史を刷新する野心的試み。英語版を更…

田中正人・斎藤哲也(編集・監修)『哲学用語図鑑』(プレジデント社、2015)

斎藤哲也『試験に出る哲学—「センター試験」で西洋思想に入門する』が とても面白かったので連読した一冊。 田中正人・斎藤哲也(編集・監修) 『哲学用語図鑑』(プレジデント社、2015)を読む。 哲学用語図鑑作者: 田中正人,斎藤哲也出版社/メーカー: プレ…

斎藤哲也『試験に出る哲学』(NHK出版新書、2018)

多くの作家に信頼される名編集者の、 初めての一般読者向け単著。 斎藤哲也『試験に出る哲学—「センター試験」で西洋思想に入門する』 (NHK出版新書、2018)を読む。 試験に出る哲学―「センター試験」で西洋思想に入門する (NHK出版新書 563)作者: 斎藤哲也…

紀伊國屋書店で、文庫三冊

西新橋M歯科で3カ月に一度の定期検査、歯石クリーニングを終え、 新宿・紀伊國屋書店本店に向かう。 2F文庫コーナーを覗くのだ。 米原万里さんの妹ユリさんが書いた『姉・米原万里』が 文春文庫の新刊で出ていた。 米原万里さんの小説、書評、エッセイはとて…

佐藤優『高畠素之の亡霊—ある国家社会主義者の危険な思想』(新潮選書、2018)

この人が訳した改造社版『資本論』(全5巻)を 2017年、神保町で3,240円(税込)で見つけ、購入。 初めて通読できた。 佐藤優『高畠素之—ある国家社会主義者の危険な思想』 (新潮選書、2018)を読む。 高畠素之の亡霊: ある国家社会主義者の危険な思想 (新…

マルクス・ガブリエル/清水一浩訳『なぜ世界は存在しないのか』(再読)

村上春樹『騎士団長殺し』と併読していて シンクロニシティを何度も味わった。 マルクス・ガブリエル/清水一浩訳 『なぜ世界は存在しないのか』(講談社、2018)を再読する。 なぜ世界は存在しないのか (講談社選書メチエ)作者: マルクス・ガブリエル,清水一…

マルクス・ガブリエル『なぜ世界は存在しないのか』(講談社、2018)その2

図書館から借りてきてうっかり積ん読にしておいた。 返却日が近づいて読み始めたら、面白い! 1/3ほど読んだところで返却期限が来て、 続きが読みたくて新刊で購入。 まず、タイトルがいいですよね。 マルクス・ガブリエル/清水一浩訳 『なぜ世界は存在しな…

マルクス・ガブリエル『なぜ世界は存在しないのか』(講談社、2018)その1

千葉雅也さんの推薦文を読み、興味を持ち、 日比谷図書文化館で順番待ちして借りてきた。 マルクス・ガブリエル/清水一浩訳 『なぜ世界は存在しないのか』(講談社、2018)。 返却期限が近づいているのに気づき、 あわてて読み始めたら、面白い! 著者は哲…

ヘーゲル/長谷川宏訳『歴史哲学講義(上)』(岩波文庫、1998)

古典を二つの翻訳で読むのは意外に面白い。 格調高い武市健人訳に対して、長谷川宏訳は親しみやすい。 ヘーゲル/長谷川宏訳『歴史哲学講義(上)』(岩波文庫、1998)を読む。 歴史哲学講義 (上) (岩波文庫)作者: ヘーゲル,長谷川宏出版社/メーカー: 岩波書…

ヘーゲル/武市健人訳『改訳 歴史哲學(上)』(1954)

譯者の薦めに従い下巻をまず読み、 次に上巻の「第一部 東洋の世界」を読んでから 最後に仕上げとして「序論」に取り組んだ。 ヘーゲル/武市健人譯『改訳 歴史哲學(上巻)』を読む。 メディア: この商品を含むブログを見る 「譯者の序」から引いてみる。 …

ヘーゲル/武市健人訳『改訳 歴史哲學(下)』(1953)

マルクスを読み進めるうちにヘーゲルを読みたくなって 図書館で数冊借りてきてザッと眺める。 そのうちの一冊になんとなくピンと来て読み始める。 これが「当たり」だった。 ヘーゲル/武市健人訳『改訳 歴史哲學(下)』 (岩波書店、1953)を読む(舊譯は…