文学/小説/物語

ク・ビョンモ/小山内園子訳『四隣人の食卓』(書肆侃々房、2019)

『破果』が素晴らしい作品だったので同じ著者・訳者による小説 ク・ビョンモ/小山内園子訳『四隣人の食卓』(書肆侃々房、2019)を読む。 四隣人の食卓 Woman's Best 韓国女性文学シリーズ作者:ク・ビョンモ書肆侃侃房Amazon チョ・ナムジュ(小説家・『82…

エランベルジェ/中井久夫『いろいろずきん』(みすず書房、1999)

中井久夫さんの絵がなんとも愛らしい。 アンリ・フレデリック・エランベルジェ (精神医学者、精神医学史家)との共作。 『いろいろずきん』(みすず書房、1999)を眺め、読む。 いろいろずきん作者:エランベルジェみすず書房Amazon この童話絵本の「まえが…

読書メモ:手嶋龍一『武漢コンフィデンシャル』(小学館、2022)

読書メモから 手嶋龍一『武漢コンフィデンシャル』(小学館、2022) 武漢コンフィデンシャル作者:手嶋龍一小学館Amazon 腰巻惹句: 「ウルトラ・ダラー」シリーズ最新作 感染爆発は、革命の聖地から始まった 舞台は香港、ワシントンD.C.、NY、東京、メルボル…

ヤマザキマリ『壁とともに生きるーわたしと「安部公房」』(NHK出版新書、2022)

Eテレ「100分de名著/安部公房『砂の女』テキストと (解説:ヤマザキマリ)と併読した。 ヤマザキマリ『壁とともに生きるーわたしと「安部公房」』 (NHK出版新書、2022)。 安部公房『砂の女』 2022年6月 (NHK100分de名著)作者:ヤマザキマリNHK出版Amazon…

我々が生きるための指針や理想が見えなくなっている(菅野昭正)

クリッピングから 「世田谷文学館ニュース」No.79(2022.3) 館長の作家対談(ゲスト:菅野昭正/聞き手:亀山郁夫) 名誉館長(二代目)と現館長(三代目)の対談、 読み応えがあった(初代館長はアメリカ文学者・佐伯彰一)。 (同館では7月3日まで「ヨシ…

松家仁之『光の犬』(新潮社、2017)

松家仁之(まついえ まさし)の文章が好きだ。 『光の犬』(新潮社、2017)を読む。 光の犬作者:仁之, 松家新潮社Amazon 『泡』『火山のふもとで』『沈むフランシス』に続いて 松家の作品を読むのは四作目になる。 記憶に残った文章をいくつか抜き書きする。 …

湯川豊選:松家仁之『泡』(集英社、2021)

クリッピングから 毎日新聞2021年12月18日朝刊 「今週の本棚/2021 この三冊(下)」 湯川豊(文芸評論家) 今年も締めくくりの時期になって 読書界でも一年を振り返る企画が楽しい。 ①泡 松家仁之著(集英社・1650円) 今年読んだ今の日本の小説のなかで い…

100分de名著『カラマーゾフの兄弟』(アンコール放送)(講師:亀山郁夫)

11月のEテレ「100分de名著」、 『カラマーゾフの兄弟』(アンコール放送)指南役は亀山郁夫先生。 その風貌、語り口から 先生がドストエフスキー作品の登場人物のひとりであっても 少しも不思議でないと感じていた。 ドストエフスキー『カラマーゾフの兄弟』…

第69回菊池寛賞発表

クリッピングから 朝日新聞2021年10月12日朝刊 菊池寛賞に小川洋子さんら 幅広い文化活動の業績に贈られる第69回菊池寛賞 (日本文学振興会主催)が11日発表され、 作家の小川洋子さんらが選ばれた。 賞金100万円。 僕は以下のお二人の受賞に注目しました。 …

ぶちかましたい右ストレート(岡奎那)

クリッピングから 讀賣新聞2021年10月4日朝刊 読売歌壇(俵万智選) 今週も好きな歌3首、抜き書きします。 退院後なに食べたい?と皆が聞く まず欲しいのは口紅なのに ふじみ野市 古田つむぎ 【評】何を入院生活の不自由と思うかは、人それぞれだ。 多くの人…

裾野からピラミッドを造る方法で英語を学ぶ

クリッピングから 朝日新聞2021年8月14日朝刊 連載小説「また会う日まで」(池澤夏樹・作/影山徹・画) 作者の池澤さんは 数ヵ国語を使いこなす語学の達人である。 その極意を掴むヒントを 連載小説の一節に見つけた。 戦争の日常 14 海軍兵学校の校長にな…

アンナ・ツィマ/阿部賢一・須藤輝彦訳『シブヤで目覚めて』(河出書房新社、2021)

鴻巣友季子の書評に惹かれ、 図書館で即予約し、読んでみた。 クリッピングから 毎日新聞2021年5月8日朝刊「今週の本棚」 鴻巣友季子(翻訳家) 『シブヤで目覚めて』(アンナ・ツィマ著、阿部賢一・須藤輝彦訳) (河出書房新社・2970円) シブヤで目覚めて…

柴田元幸編・訳・註『英文精読教室(第1巻/第2巻)』(研究社、2021)

月に一度か二度、新宿まで出掛ける。 Book 1st. を覗きに行くのだ。 近所の書店(一軒だけになってしまった)、 隣町の大手書店支店(それなりに広い)でも手に入らない本がある。 どうしても手元に置いておきたい本かどうか、 現物に触れて確かめたい。 予…

100分de名著/メアリ・シェリー『フランケンシュタイン』(講師:廣野由美子)

クリッピングから NHKテレビテキスト「100分de名著」2015年2月 メアリ・シェリー『フランケンシュタイン』(講師:廣野由美子) 若松英輔、秋満吉彦の対談「名著とともに歩んだ10年」 (Eテレ「100分de名著」サイト掲載)を読んで 僕が一番惹かれたのがこの…

100分de名著/三島由紀夫『金閣寺』(講師:平野啓一郎)

クリッピングから NHKテキスト「100分de名著」2021年5月 三島由紀夫『金閣寺』(小説家/平野啓一郎) (放送:Eテレ月曜日 午後10:25〜10:50) NHK 100分 de 名著 三島由紀夫『金閣寺』 2021年5月 (NHK100分de名著)作者:平野 啓一郎発売日: 2021/04/23メデ…

鴻巣友季子評:アンナ・ツィマ『シブヤで目覚めて』(河出書房新社、2021)

クリッピングから 毎日新聞2021年5月8日朝刊 「今週の本棚」鴻巣友季子評(翻訳家) 『シブヤで目覚めて』アンナ・ツィマ著、阿部賢一・須藤輝彦訳 (河出書房新社・2970円) シブヤとプラハで二人に分裂した 日本フリークのチェコ人女子学生。 彼女の目に日…

小池真理子解説:藤田宜永『愛さずにはいられない』(新潮文庫、2021)

小池真理子が朝日新聞土曜別刷beに連載しているエッセイ 「月夜の森の梟(ふくろう)」でこの作品の存在を知った。 藤田宜永『愛さずにはいられない』 (集英社、2003/新潮文庫、2021)を読む。 愛さずにはいられない(新潮文庫)作者:藤田宜永発売日: 2021…

小さな声が聞こえたときは、まず耳を澄ます

どこかでいいことを読んだなぁ、聞いたなぁと 「いいこと」の記憶だけが浮かんでくることがある。 そんなときは後回しにしないで、まず探してみる。 きっと自分にとって大事なメッセージだと思うからだ。 あった、あった、これだ。 先日読み終えた、 いとう…

いとうせいこう『想像ラジオ』(河出文庫、2015)

自分にとって本の「読み頃」というのがあるみたいだ。 気になっていてもその時が来るまではなかなか手が出せない。 3月12日放送「高橋源一郎の飛ぶ教室」(NHKラジオ第一)で 近著『福島モノローグ』が紹介され、 著者自身が二コマ目のセンセイとしていらし…

インタビュー:坂上泉『インビジブル』(文藝春秋、2020)

クリッピングから 「オール讀物」2021年1月号 第164回直木賞候補作『インビジブル』 「戦後の大阪を駆ける二人の刑事」―坂上 泉 (インタビュー・構成:「オール讀物」編集部) インビジブル (文春e-book)作者:坂上 泉発売日: 2020/08/26メディア: Kindle版 …

佐藤優評:手嶋龍一『鳴かずのカッコウ』(小学館、2021)

クリッピングから 毎日新聞2021年3月6日朝刊 「今週の本棚」佐藤優評(作家、元外務省主任分析官) 『鳴かずのカッコウ』手嶋龍一著(小学館・1870円) 鳴かずのカッコウ作者:手嶋龍一発売日: 2021/02/25メディア: Kindle版(イラストレーション/石原一博、…

『グロテスク』と『ディスタンクシオン』(加藤晴久)

クリッピングから 藤原書店PR誌「機」2021年2月号(No.347) <寄稿>今、なぜブルデューか? 『グロテスク』と『ディスタンクシオン』 東京大学名誉教授 加藤晴久 ディスタンクシオン〈普及版〉I 〔社会的判断力批判〕 (ブルデュー・ライブラリー)作者:ピエ…

佐藤優評:島田雅彦『虚人の星』(講談社、2015)

「100分de名著」での谷崎潤一郎スペシャル講義、 読売文学賞受賞の小説『君が異端だった頃』が面白かった。 すっかりファンになってしまった。 島田雅彦『虚人の星』(講談社、2015)を連読。 虚人の星 (講談社文庫)作者:島田 雅彦発売日: 2017/12/15メディ…

隆明と源一郎

NHKラジオ第1/2021年2月19日 21:05〜21:55 「高橋源一郎の飛ぶ教室」前説より (NHKサイトより) 若かりし源一郎が小説家を志し 新人賞に応募し始めた頃の話。 第一作はあえなく落選。 第二作は、選考委員でなく、 作品に敬服していた 吉本隆明ただひとりに…

佐藤優『新世紀「コロナ後」を生き抜く』(新潮社、2021)

佐藤優さんの講義録は毎回中味が濃く、 受講生とのやりとりの臨場感まで活字化されていて読み応えがある。 佐藤優『新世紀「コロナ後」を生き抜く』(新潮社、2021)を読む。 新世紀「コロナ後」を生き抜く作者:佐藤 優発売日: 2021/01/27メディア: 単行本(…

高樹のぶ子『私が愛したトマト』(潮出版社、2020)

本の連読は予想もしなかった場所に自分を連れていくことがある。 『明日香さんの霊異記』(『少女霊異記』改題)が軽快で面白かったので、 この本を続いて手にした。 高樹のぶ子『私が愛したトマト』(潮出版社、2020)を読む。 私が愛したトマト作者:髙樹 …

島田雅彦『君が異端だった頃』(集英社、2019)

2020年10月「100分de名著」の谷崎潤一郎4作品講義が とてもチャーミングだった。 島田雅彦『君が異端だった頃』(集英社、2019)を連読する。 君が異端だった頃作者:島田 雅彦発売日: 2019/08/05メディア: 単行本(文字だけで構成した水戸部功の装幀が目を引…

カエルくん、あらわる!

同居人が世話する庭に棲みついているカエルくんです。 ときどき顔を見せます。 日々食べていく虫がここにいるのかな、と心配になりますが、 夏に見かけたときも、この日も、泰然としています。 東京を救うような大仕事はしなくていいから、 天寿を全うできる…

高樹のぶ子『少女霊異記』(文藝春秋、2014)

Eテレ「100分de名著」11月の講師、作家・高樹のぶ子が 番組テキスト「はじめに」で紹介していた。 「現代の文学ではなく古典と思いきり格闘したい」と2014年に発表した作品。 『少女霊異記(りょういき)』(文藝春秋、2014)を読む。 少女霊異記作者:高樹 …

多和田葉子『献灯使』(講談社、2014/文庫 2017)

夜が更けて、「小説が読みたいな」と思えた時間に 少しずつ読み継いできた。 多和田葉子『献灯使(けんとうし)』(講談社、単行本2014/文庫2017)を読み終える。 献灯使 (講談社文庫)作者:多和田葉子発売日: 2017/09/08メディア: Kindle版 表4、本書紹介文…