映画

彼女が傍にいてくれるなら、怖いものなんてあるものか、なんとかなるさ(山田洋次)

クリッピングから 朝日新聞2023年12月9日朝刊別刷be 山田洋次「夢をつくる」24 彼女がいるだけで勇気が湧いた 僕の青春時代は、 食糧不足でおなかはいつも空(す)いていたけど、 恋にもまるで飢えたように憧れていた気がします。 僕も人並みに恋に苦しみ、 …

この人と組むのはもうごめんだな(山田洋次)

クリッピングから 朝日新聞2023年11月11日朝刊別刷be 山田洋次「夢をつくる」23 もうごめんだな、と思ったけれど シリーズということは全く考えていないから 第一作のタイトルはただの「男はつらいよ」です。 渥美さんは張り切ったのでしょうが、 芝居がどう…

庄司輝秋「さよなら ほやマン」(2023)

新宿に映画を観に行った。 庄司輝秋監督「さよなら ほやマン」(2023)。 公式サイトから引用する。 監督を務めたのは本作が長編デビューとなる庄司輝秋。 故郷である石巻への熱い想いを胸に、 宮城県石巻市の沖に浮かぶ網地島でオールロケを敢行。 キャスト…

ついにわれわれの作品はあの吉永小百合をマドンナに迎えるんだ

クリッピングから 朝日新聞2023年7月8日朝刊別刷be 山田洋次「夢をつくる」19 吉永小百合さんを迎えた喜び (映画「男はつらいよ 柴又慕情」(1972年)の撮影現場での 山田さん(左)と吉永小百合=松竹提供) 追われるように作り続けて、 8作目の「寅次郎恋…

必要なのは才能より忍耐力だよ(橋本忍)

クリッピングから 朝日新聞2023年6月10日朝刊別刷be 山田洋次「夢をつくる」18 脚本の師・橋本忍さんとの日々 (左から野村芳太郎監督、脚本の橋本忍、山田洋次さん=シネマ旬報社提供) 監督になるにはシナリオが書けないとダメだ、 シナリオが書けない監督…

明日から、もし残ったらここに持っておいで(屋台店のおばさん)

クリッピングから 朝日新聞2023年2月25日朝刊別刷be 山田洋次「夢をつくる」14 ちくわを買ってくれたおばさん おでんを食べるとき、 まずちくわを探すという癖が僕にはある。 ちくわには遠い昔の忘れられない思い出があるからです。 前にも話しましたが、 旧…

教養としてあなたの脳裏に描かれた風景なのだよ(高羽 哲夫)

クリッピングから 朝日新聞2022年12月10日朝刊別刷be 山田洋次「夢をつくる」11 「おかみさん」だった高羽さん 高羽さん(哲夫<たかは てつお> カメラマン、 1926-1995/引用者注)とは ロケハンで日本全国を歩きました。 1980年代から地方都市の過疎化が…

まだお金は残っているかい?(渥美清)

クリッピングから 朝日新聞2022年10月8日朝刊別刷be 山田洋次「夢をつくる」8 23作目「翔(と)んでる寅次郎」の北海道ロケの時のこと。 ロケ現場に向かうべく僕は渥美さんと肩並べて 白樺(しらかば)の林を歩きながら、つい愚痴をこぼしたのです。 「作品…

いつも寅さん、見てるよ。渥美清は元気かい

クリッピングから 朝日新聞2022年9月17日朝刊別刷be 山田洋次「夢をつくる」7 寅さんシリーズが始まって7作目か8作目の頃。 映画界でそんなに続いた例はないし、 なんだかみっともないからこの辺でやめたほうがいいと思うけど、 と僕は渥美さんに提案したこ…

我々が生きるための指針や理想が見えなくなっている(菅野昭正)

クリッピングから 「世田谷文学館ニュース」No.79(2022.3) 館長の作家対談(ゲスト:菅野昭正/聞き手:亀山郁夫) 名誉館長(二代目)と現館長(三代目)の対談、 読み応えがあった(初代館長はアメリカ文学者・佐伯彰一)。 (同館では7月3日まで「ヨシ…

巡礼地の焼きそばパン

町のベーカリーK屋の前を自転車で通り過ぎようとすると、 ガラス越しに「焼きそばパン」がひとつ残っているのが見えた。 菅田将暉・有村架純が共演した映画 『花束みたいな恋をした』に登場したパン屋はここで撮影した。 以来、ファンたちの巡礼地となり、 …

彼の妻だった女優の顔を、記憶に甦らすことができない(蓮實重彦)

クリッピングから 筑摩書房PR誌「ちくま」2022年5月号(No.614)<些事にこだわり> 7 アカデミー賞という田舎者たちの年中行事に つき合うことは、いい加減にやめようではないか蓮實重彦 (はすみ しげひこ 文芸評論家/映画評論家) (表紙絵 ヒグチユウコ…

聖地になった町のパン屋

僕がときどき行くパン屋Kに 女性客がたむろしている。 パンを買ってもなかなか引き上げようとしない。 前の道路にもスマホ片手の女性たちがいる。 後でおかみさんに尋ねると、 映画のロケ地になってからファンが聖地巡礼に訪れているらしい。 そう言えば、シ…

ローアングルの二匹

窓辺で日向ぼっこしている二匹を見つけたので、 本日は小津安二郎張りのローアングルで狙ってみました。 左:大王、右:楽浪(ささなみ)さんです。

「わからない」と恐れずに言ってみる(仲村颯悟)

スクラップブックから 朝日新聞2018年12月14日朝刊 「沖縄」を考える 土砂投入を前に 僕らの世代 わりきれない 大学生の映画監督 仲村颯悟(りゅうご)さん(22) 米国普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)返還で日米が合意した 1966年に生まれました。 「一日も…

響ほど暴力は振るわないかな(平手友梨奈)

スクラップブックから 朝日新聞2018年9月14日夕刊 「響—HIBIKI—」に主演 平手友梨奈 自分に正直な生き様を 紅白歌合戦にも出た人気グループ 「欅坂(けやきざか)46」の不動のセンターと評される。 なのに終始アイドルらしからぬオーラで取材の場を支配した…

A・ジュリアン『こどもが教えてくれたこと』(2016)

スクラップブックから 朝日新聞2018年7月20日朝刊「ひと」 闘病中でも「今を生きる」子どもたちを映画に撮った アンヌドフィーヌ・ジュリアンさん(44) パリでジャーナリストとして 雑誌や新聞に執筆していた12年前、 長女が「異染性白質ジストロフィー」だ…

万引き、不正受給で血縁を越える

スクラップブックから 朝日新聞2018年5月21日 是枝監督作 カンヌ最高賞 「万引き家族」 邦画21年ぶり 「万引き家族」は、 監督にとって13本目の長編劇映画。 是枝監督によると、作品の構想を練っていた時、 ニュースで報道される家族の姿が目に留まったとい…

スクリーンで上映しない映画は映画なのか

スクラップブックから 朝日新聞2018年5月17日夕刊 カンヌ 進化への宿題 「劇場公開限定」にネトフリ反発 映画祭の最高峰で、フランスで19日まで開催中の カンヌ国際映画祭が揺れている。 有力な映像作品を製作するネット動画配信大手の ネットフリックスは今…

佐藤優『悪の正体—修羅場からのサバイバル護身術』(2017)

キリスト教や神学は講義を聴いたり本を読んでも なかなか肌感覚で掴めないところがある。 ところが「悪」の補助線を引くと、 「なるほど!」と合点がいくことが何度かあった。 「悪」に着目すると、「善」を読み解けるのか。 佐藤優『悪の正体—修羅場からの…

なるほど、讀賣の国際欄が面白い

会社で取っている讀賣、朝日を読み比べている。 池上彰さん、佐藤優さんが近著で勧めている新聞の読み方だ。 なるほど讀賣は二人が指摘している通り 国際欄に読みでのある記事を載せている。 この日の朝刊は映画監督オリバー・ストーンのインタビューが面白…

アレクサンドル・ソクーロフ『牡牛座 レーニンの肖像』(2001)

アレクサンドル・ソクーロフ 『牡牛座 レーニンの肖像』 を見る。 歴史の権力者シリーズ第2作である。 レーニンが実際に晩年に住んだモスクワ郊外ゴールキの別荘が ロケーションに使われている。 牡牛座 レーニンの肖像 [DVD]出版社/メーカー: 紀伊國屋書店…

アレクサンドル・ソクーロフ『モレク神』(1999)

ヒトラーが命じ実行した行動は到底許せるものではないが、 人格、行動、思考には昔から興味がある。 怖いもの見たさの心理か。 アレクサンドル・ソクーロフ『モレク神』を見る。 モレク神 [DVD]出版社/メーカー: 紀伊國屋書店発売日: 2010/11/27メディア: DV…

アレクサンドル・ソクーロフ『太陽』(2005)

アレクサンドル・ソクーロフ『太陽』を見る。 太平洋戦争末期から戦後早々まで イッセー尾形演じる昭和天皇を主役に描く。 日本人キャストがほとんどを占め日本語で演じる。 ソクーロフはどうやって演技指導をしたのか。 日本人スタッフが監督をよほどうまく…

二大俳優競演、小津茶漬け

同居人が野蕗を仕入れ、 どうやら佃煮をつくるらしい。 いったん下茹でを済ませた後に 薄皮を丁寧にむきコトコト煮る。 わりかた辛気くさいプロセスを経る必要がある。 さて同居人の留守にどうやって味見をしてやろうかと考えて やはり茶漬けが一番という結…

貴田庄『小津安二郎の食卓』(2000/2003文庫版)

貴田庄『小津安二郎の食卓』を読む。 十年以上前だったと記憶するが、 海外の友人、知り合いから小津作品について 尋ねられることがあった。 小津の名前を知っているだけで 当時一本も見ていなかった僕は恥ずかしく思った。 特別なシアターでのみ見ることの…

高峰秀子『わたしの渡世日記(下)』(1976/2012文庫版)

高峰秀子『わたしの渡世日記(下)』を読み終える。 本文の面白さはいまさら言うに及ばないが、 巻末に掲載されている沢木耕太郎の解説が絶品である。 彼女は、このどこにもいないはずの「高峰秀子」に向かって ゆっくりと成熟していったように思われる。 (p…

高峰秀子『わたしの渡世日記(上)』(1976/2012文庫版)

高峰秀子『わたしの渡世日記(上)』を読む。 いやぁ、べらぼうに面白い。 既に定評のある著書ではあったが、 なぜかこれまで手にする機会がなかった。 新潮文庫に入った今回、ようやく読むことができた。 わたしの渡世日記〈上〉 (新潮文庫)作者: 高峰秀子…

設計図を持たないこと

きょうはベルリンスクールの セッションでクラスを代表して スタジオジブリの鈴木敏夫さんに インタビューさせていただいた。 「宮さんはラストシーンを考えずに ディテールから入っていく。 それは江戸時代の大名屋敷が 設計図を持たないことにも通じている…

人間と人間の化学反応

必要があって 宮崎駿さんの作品をまとめて観ている。 「となりのトトロ」「ハウルの動く城」 「魔女の宅急便」「風の谷のナウシカ」 「千と千尋の神隠し」。 ストーリーもさることながら、 ディテールがなんて魅力的なんだろう。 脇役の動物やお化けや なに…