西原理恵子『生きる悪知恵』(2012)


西原理恵子『生きる悪知恵
ー正しくないけど役に立つ60のヒント』を読む。
老若男女の人生相談をサイバラがどうさばくか、
僕には見ものだった。


生きる悪知恵 正しくないけど役に立つ60のヒント (文春新書 868)

生きる悪知恵 正しくないけど役に立つ60のヒント (文春新書 868)


結論。
サイバラの解答は苦労人らしく質問者の心のひだをとらえており、
なおかつ実践的な助言に満ちていた。
どんな質問でも茶化したりせず、
かと言って質問者を甘やかさない姿勢に僕は何度も共感する。



例えばこうである。
介護士の男性32歳の相談は、
「仕事にやりがいは感じますが、給料が安く生活が厳しいです」。
サイバラ介護士や看護婦の仕事を評価し
スチュワーデスの給料が(安くなったとは言え)より高いことを
おかしいとズバリ指摘する。



一方でサイバラの目線は現実から離れない。
国の制度が変わるのを待っていてもアテにならない。
その答えは、「同じような仕事の嫁を探せ」。
同じような仕事をしている女性なら互いの苦労も理解し合えるし、
第一、二人分の収入があれば給料が安くとも
りっぱに生計を立てられるではないかと激励する。



サイバラの人生相談、思いがけない収穫であった。
質問者との距離感は活字ならではのものだろう。
テレビでは無理だ。
同業の漫画家たちからの相談5件は蛇足だった気がする。
読者サービスのつもりだったろうが、
この部分だけリアリティが急に薄れた。惜しい。


(文中敬称略)