百目鬼恭三郎『続・風の書評』(1983)


百目鬼恭三郎『続・風の書評』を読む。
週刊文春』に連載された匿名書評コラム「ブックエンド」の後半、
1980年9月から82年9月までの掲載分をまとめた続篇である。
連載が終了したのを理由に
「風」はこの単行本上梓の機会に実名を明かす。



百目鬼は当時朝日新聞編集委員であった。
「風」の切っ先は朝日関連書籍であろうが、
朝日書評欄で批評家が褒めていようがおかまいなく鋭い。
その点、なんとも小気味いい。
社内でも「風」の扱いにはさぞ手を焼いたろう。
その道の権威者の書籍の不備、杜撰、怠慢を斬るのが
「風」の真骨頂ではなかろうか。



反面、この著者の著作相手に
そこまで力まずともよかろうと思うこともある。
他人にどう思われようが
自分の意見をハッキリ言う書評家がいまの論壇にいるだろうか。
とりわけ日本には希有であろう。
多様性を受け入れることをよしとする僕は、
現在の書評界に「風」の不在であることを惜しむ。



連載を終える最後の一行はこうだ。


   この欄はこれで終わる。
   風はやんだ。
   著者諸君、枕を高くして眠りたまえ。


           (p.172)


頑固爺、格好いいね。


(文中敬称略)