牧野洋『メディアのあり方を変えた
米ハフィントン・ポストの衝撃』(2013)を読む。
ハフィントン・ポスト、略称ハフポストは、
2005年にアリアナ・ハフィントン、ケネス・レラー、
ジョナ・ペレッティの三人によって創刊された。
現在「アメリカ最強のネット新聞」(本書腰巻帯より引用)である。
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ハフポストが面白いのはブログ、アグリゲーション
(他のニュースソースから記事を引用し再整理すること)など、
言わば無料の仕入れからメディア商売を立ち上げたこと。
あまたあるアグリゲーションサービスから
「シックスディグリー理論」「感染メディア」
「検索エンジン最適化(SEO)」の三大武器で群れを抜け出し
AOLによる3億1500万ドルの買収価格まで価値をあげたこと。
あげた利益で人材が流動化している新聞界の優秀な記者たちを雇用して
調査報道にも力を入れ始めていることだ。
2012年にはデビッド・ウッドの調査報道による連載企画
「戦場を越えて」でピュリツァー賞を受賞。
営利のネット・メディアとしては初の受賞である。
アメリカは日本以上に新聞メディアの危機、崩壊が叫ばれているが、
その激動の中からハフポストのようなメディアが現れた。
このダイナミズムはアメリカ特有の現象だ。
牧野は日本経済新聞社を退社し5年間暮らしたアメリカで
現地のメディアの激変ぶりを事実に基づき丁寧に書き込む。
252ページの新書が牧野が日経時代に書きたくても書けなかった
調査報道の代表事例そのものにも見えてくる。
事実、ハフポストが現れた文脈、意味、価値などに触れた新聞記事は
僕が知る限りこれまでなかった。
ハフポストをネットのきわものと扱うか、時代の寵児ともてはやすか、
たいがいはどちらかで、調査報道と呼べるほどの中身がない。
日本でハフポストは朝日新聞と提携し、
2013年5月7日に日本版を松浦茂樹を編集長として開設した。
本書の最後に牧野はこう記す。
「ハフポストの日本進出には大きな意味がある。
たとえ日本版がビジネスとして成功しなくても、である。」
(p.246より引用)
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ハフポストが、
記者クラブの存在で「官報複合体」と呼ばれる
日本の新聞メディアに変化をもたらすか。
それとも既存大手メディア朝日新聞が、
ソーシャルメディアを取り込んでいるように演出する
アクセサリーに終わるか。
The Huffington Post、ハフポスト日本版の今後に注目していきたい。
世界と日本のメディアを比較考察するために
牧野の前作『官報複合体』との併読をお勧めする。
(文中敬称略)