萩生田勝『警視庁捜査二課』(2008)


一冊からまた次の一冊へ。
思いがけぬ場所を偶然訪れる本の旅の連鎖が愉しい。
佐藤優が『外務省に告ぐ』で対談相手のひとりに選んだ
元警視庁警視・萩生田勝(はぎうだ まさる)の著書を読む。
本の題名はずばり、『警視庁捜査二課』。
これがべらぼうに面白かった。


警視庁捜査二課

警視庁捜査二課


2001年、萩生田率いる捜査二課は
外務省報償費流用事件に取り組む。
要人外国訪問支援室長・松尾克俊が
内閣官房報償費から9億8700万円を着服した事件である。


外務省に告ぐ (新潮文庫)

外務省に告ぐ (新潮文庫)


松尾ルートから局長クラスの贈収賄立件に
たどり着きかけたとき、萩生田は突然捜査から外される。
大詰めにきた捜査も中止である。
萩生田が定年前、58歳で辞表を提出した原因のひとつにもなった。


この本の面白さは低次元の暴露ではない。
誇りを持つ刑事たちの仕事の日常が描かれる。
収賄事件を手がけることができる組織は
日本では東京地検特捜部と警視庁捜査二課だけだ。
前者がエリートの切れ者集団とすれば、
萩生田が所属した後者は現場で地を這う連中だ。



国家権力が動くとき、
現場の捜査チームを破壊する恐ろしさも本書は冷静に伝える。


(文中敬称略)