佐藤優『君たちが知っておくべきこと』(2016)


灘高生徒が生徒会主催・先輩訪問行事を活用して
作家・佐藤優の仕事場を訪れた。
2013年から16年まで毎年4月、
新潮社編集部コーディネートで実施したゼミナールの記録だ。
佐藤優『君たちが知っておくべきこと—未来のエリートとの対話』を読む。



佐藤は県立浦安高校出身で灘高先輩ではない。
中学時代、灘高出身の敬愛する予備校の先生に出会った縁を
いまでも大切に思い、この仕事を引き受けた。
一方的な講義でなく事前に佐藤の著作数冊を読み込んだ灘高生たちが
質問したり、ときに佐藤に挑みかける知の対話が楽しい。
3年分の内容が次の3章にまとめられている。


  「真のエリートになるために」(2013年)
  「戦争はいつ起きるのか」(2014年)
  「僕たちはナショナリズムから逃げられない」(2015年)


日本でエリートと言えば
ネガティブなイメージで語られることが多い。
佐藤はその常識を根底から疑い、
未来のエリートである灘高生に率直に語りかけ、彼らの言葉に耳を傾ける。
世代を超えたこうした知の交流が
日本や世界の複数の場所で起きるといいな、と思えた。



  (加藤陽子東大大学院教授が栄光学園中高生と実施した
  ゼミナール。佐藤も本書で紹介している。名著)


そうそう、そう言えば灘高には女子はいなかったんですね。
男子だけが作る独特のコミュニティの雰囲気に
本書を読んでいまさらながら気づきました。


(文中敬称略)