池上彰が読売の報道姿勢を問う、「おい、マジか」


スクラップブックから。
週刊文春」2017年6月15日号。



池上彰のそこからですか!?」連載301
「何のための報道か」の論点がよかった。


   政権にとってダメージになる文書の存在が
   報道されると、文書の存在を告発しようとしていた
   元官僚のスキャンダルを新聞が報道。
   告発の威力を削いでしまう。
   これがいま日本で起きていることです。
   (中略)


   すると、このニュースを取材していた記者たちに、
   「文書の存在を告発しようとしている人物のスキャンダルが
   まもなく出るから、取り上げないほうがいいよ」
   という声が首相官邸の報告から聞こえてきます。



(読売新聞2017年5月22日朝刊より)


   何のことだろうと話題になっていたら
   五月二二日付読売新聞朝刊に記事が出ました。
   社会面の目立つ場所に
   「前川前次官 出会い系バー通い」という見出しつきでした。
   これには驚きました。


   事務次官を辞めてしまった人であり、
   直接的な犯罪の容疑があるわけでもない人に関する
   スキャンダル報道。
   内容は薄く、週刊文春だったら、
   もっと徹底的に取材するだろうと
   突っ込みをいれたくなるレベルの記事です。
   

   従来、大手新聞社は決して記事にしないような内容が、
   なぜ紙面に出るのか。
   前川前事務次官を人格的に貶め、
   文書の存在の告発という政権に打撃になる話を
   薄めてしまおうという意図が背後に見える動きでした。
   (中略)



(読売新聞2017年5月26日朝刊より)


   私が驚愕したのは、
   前川氏が五月二五日に記者会見した際の
   記者たちとのやりとりです。
   二六日付読売新聞朝刊は、次のような記事を掲載しています。


   <在任中に知った情報を公表することが
   国家公務員の守秘義務違反に当たらないかを尋ねる質問には、
   「説明を控えたい」「ノーコメント」などと遮った。>


   おい、マジか。


   この質問をしたのがどこの社か、
   この記事だけではわかりませんが、
   こんな質問をした記者がいたのですね。
   記者は、ふだんどんな取材をしているのか。
   当局から発表された資料を基に原稿を書いているから、
   こんな質問が出てくるのではないか。
   (中略)


   それが、「守秘義務」を盾に
   取材ができなくなってもいいのか。
   当局が「国民に知らせたい」と考える内容だけが公表され、
   都合の悪い情報は「守秘義務」の名の下に拒否する。
   そういう国家になってもいい。


   前川氏の記者会見で前述のような質問をした記者は、
   無意識のうちに、こういう発想をしているのです。


   おい、マジか。



(「週刊文春」2017年6月15日号より)


池上さんが自分の文章で
「おい、マジか。」と二度に渡って表現したことは
僕の記憶にない。
普段こうした言葉使いはしない人だ。
メディアの矜持を放棄しているのかと疑いたくなる
読売の報道姿勢に対する
池上さんの強い憤りが伝わってくる。


読売新聞の加計学園事件に対する記事には
僕も強い違和感を覚えた。
安倍内閣御用新聞と言われても仕方ない内容だ。
せめて他紙誌と比較して読み、自分で考え続け、
何が事実か、誰が嘘をついているのか、自力で掴む努力をしたい。


(文中一部敬称略)