池上彰『聞かないマスコミ 答えない政治家』(2013)


政治報道に関わるジャーナリストが「いい質問」をすること。
厳しい質問があれば政治家も勉強して準備しなくてはならない。
そこから政治の立て直しが始まると池上は言う。
池上彰『聞かないマスコミ 答えない政治家』(ホーム社、2013)を読む。


聞かないマスコミ 答えない政治家

聞かないマスコミ 答えない政治家


「おわりに」から引用する。


   2012年衆議院総選挙のテレビの特番放送後、
   何人もの人から、
   「池上さんにはあんな厳しい側面もあったんですね。
   どちらが本物の池上さんですか?」と質問されました。


   いつもニュースをやさしく解説するイメージを持たれているために、
   そんな質問をされたのだと思いますが、
   私は社会部記者として、さまざまな取材をしてきました。
   取材とは要するに質問をすること。
   常に「いい質問」をしようと心がけてきました。


   つまり、政治家に厳しい質問を投げかけるのが、
   本来の私の姿なのです。
   ニュースや歴史、言葉の伝え方などの本を書くことが多い私ですが、
   今回は、本来の私の姿を投影する本に挑戦しました。
   (p.204)



第6章で池上は、アメリカのジャーナリズムに触れる。
女性記者ヘレン・トーマスは2010年、90歳で引退するまで
51年間にわたってホワイトハウスを取材し続けた。
CBSダン・ラザーは24年間ニュース番組のキャスターを続け、
74歳まで仕事をした。
ABCサム・ドナルドソンは41年間勤務し、
74歳まで記者として働いた。


三人とも豊富な経験、知見を活かし、
大統領相手でも国民の知る権利のためなら一歩も引かぬ。
彼らの現場力、辛辣な質問力こそ
政治記者の鑑であると池上は主張する。



(あわただしい朝の時間を縫って朝食、自分用弁当を用意)



2017年、日本における政治ジャーナリズムはどうだろう?
政治家の対応は?
本書出版から4年。
成熟したのか、未熟なままか。
残念ながら、答えは明らかのように思える。


wikipedia:池上彰
(文中敬称略)