本人の分類によれば、
当事者手記という形態の「告白」であり、
「アナトミー(分析)」の要素もある作品である。
一方、文庫解説者・鴻巣友季子(翻訳家)は
本作にディケンズの小説の手触りを感じたと書いている。
佐藤優『紳士協定—私のイギリス物語』を読む。
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佐藤の自伝小説風ノンフィクションは、
『先生と私』『私のマルクス』『同志社大学神学部』
『紳士協定』『プラハの憂鬱』
『甦る怪物(リヴィアタン)—私のマルクス・ロシア篇』
と壮大な物語になっている。
著者の理詰めの著作群に対し、
これらの作品は著書の細部に渡る記憶の描写と
失った時間に対する哀愁が漂うところが魅力だ。
『紳士協定』は外務省の同期・武藤くん、
イギリス留学中のホームステイ先の少年・グレンと出会い、
過ごした時間が物語の軸になっている。
佐藤が後に逮捕・拘留されることをいち早く予言し、
外務省の命令で自ら佐藤の事件を担当せざるを得なかった武藤くん。
佐藤の少年時代の分身のようで、
知的対話を楽しみ、お互いの不安も打ち明ける仲になれたグレン。
やがてこの二人とも別れるときがやってくる。
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同志社大学神学部 私はいかに学び、考え、議論したか (光文社新書)
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佐藤は恐るべき読書量、博覧強記の知性の持ち主だが、
優れた小説作品を読者に紹介する活動も継続している。
そんな佐藤自身の、情感溢れる作品を読めることは
読者のひとりとしてまた格別の喜びなのだ。
(文中継承略)