分からないかもしれないけれど、一緒に考えたいよ


スクラップブックから
朝日新聞2018年2月1日朝刊
「小さないのち 悲しみと歩む」(3)
あなたの言葉 信じるよ
虐待受けた私 同じ子増えたら嫌



   長野県の石坂好恵さん(23)は、
   虐待やいじめを受けている子どもたちのSOSに
   耳を傾ける活動に取り組んでいる。
   (略)


   (石坂さんは)5年生のときには、
   「もういい」と思い、自ら命を絶とうとした。
   ちらしの裏に「お葬式はしなくていい」と書き、
   ひもを持って学校の資料室にいたところを
   担任に見つかった。


   「親がそんなことをするはずない」と言われたり、
   保護されても家に帰されたりして、
   大人が信じられなくなった。  
   (略)


   (NPOで)約2年活動するうちに、
   自分のような子どもが増えたら嫌だ
   という気持ちがまた強くなり、
   高校生から50代までの人たちと
   2015年に団体「こどものSOSに目を向ける」を立ち上げた。


   SNSなどで、毎日のように子どもたちから相談が届く。
   虐待を受けている子には、石坂さんはこうアドバイスする。
   「服のポケット全部にハンカチを詰めて」
   「蹴られた時におなかを守るため、
   服の下にぬいぐるみを隠しておいて」—。
   自分が子どもの時に身を守ったやり方だ。
   (略)


   いじめを受け、中学で不登校になった高校1年の少女は、
   悩みを聞いてくれる石坂さんを信頼する。
   「いろんなことを乗り越えた強い大人だと
   思っていたけれど、優しくて繊細で、
   もっと強さが深い人だと思う。
   こんな風なひとになりたいと初めて思った人です」
   (略)


   仲間と話し合い、たどりついたのが、
   「分からないかもしれないけれど、一緒に考えたいよ」
   と伝えることだった。
   自分をさらけ出していく。
   もう腕や首の傷痕も隠さないと決めた。
                     (山田佳奈)


虐待を受けている子どもたちのSOSに
石坂さんが助言するのは
自身の体験に基づいた具体的な知恵だ。
真理はいつも具体的であることをここでも知る。



記事のレイアウトについて。
見出し「あなたの言葉 信じるよ」が
石坂さんの写真と近い位置に置かれ、
石坂さん自身のメッセージと一目で分かる工夫がされている。


相談ダイヤルの電話番号は数字だけで無機質だが、
電話の向こうにこんな人がいてくれるとイメージできるなら
子どもたちも思い切って相談できるかもしれない、と思った。




ハンガリーの同僚が制作した子どもの虐待防止を訴えるユニセフの動画。
石坂さんと似た助言を子どもたちがしているのが印象的)