千早茜『男ともだち』(文春文庫、2017)

三省堂書店店員・新井見枝香さんが選んだ
第1回新井賞受賞作品。
千早茜『男ともだち』(文春文庫、2017)を読む。


男ともだち (文春文庫)

男ともだち (文春文庫)


新井賞は、あるとき直木賞選考作品に納得いかなかった新井さんが
上司を説得して独自に立ち上げた賞。
直木賞・芥川賞発表の同日に年2回発表される(2018年下期対象分は1月16日)。
直木賞受賞作品と一緒に並べたところ
三省堂神保町店では新井賞作品販売数が上回ったと話題になったこともある。
一度勤務先で開催されたミニセッションのゲストでいらして、
飾らぬ人柄、率直な物言いでアイデアと行動力のある方だった。


野次馬根性で手にしたこの小説、なかなか面白かった。
イラストレーションで身を立てる主人公・神名茜。
大学時代の先輩でいまは大学病院に医薬品を売り込む仕事をするハセオ。
男女関係なしに男女が友情、信頼を育むことは可能か、
というテーマが真ん中にある。


登場人物に「いい子ちゃん」はひとりも出てこない。
キャラクターがどう活き活きと動くかが、小説の勝負だ。
読後感は悪くなかった。
新井賞を受賞していなければ、たぶん気づかなかっただろう。


誰かが「面白い!」と思った小説(本)が、
別の誰かに伝染して命脈を保つのは、
いまやマイナー領域に属する書籍にこそふさわしい動きに思える。
新井さんは「本屋大賞」を立ち上げたひとりでもある。


現場での活躍が認められ本部に抜擢されたが、
「現場から離れたらちっとも勘が働かなくてつまらん!」と
やる気を自主的にセーブして(苦笑)現場に即復帰。
ご本人の新刊『本屋の新井』もなかなか読ませる。


本屋の新井

本屋の新井


   初出:「別冊文藝春秋」(2013)
   単行本 文藝春秋、2014