小室直樹『親子関係は親分と子分だ』(KKベストセラーズ、1984)

小室直樹さんの本はどれを読んでも、
いまに通じる視点・論点があって明快だ。
小室直樹『親子関係は親分と子分だ—息子(娘)に脅える親に告ぐ』
(KKベストセラーズ1984)を読む。



本書は35年前に出版された新書だ。
猛威を振るい始めた家庭内暴力の真因を
社会科学の方法で解明していく。
学問的にオーソドックスな方法を使っているが、
結論は「常識」とは異なる。
小室さんに言わせれば、それこそが学問の真価なのだ。
一節を引用する。


   現代日本における「教育」の機能は、
   社会化の一種たる教育ではなくて、
   階層構成原理たるにある。
   その要石(キースト:ママ)たる入試によって、
   業績(パフォーマンス)は、
   その正反対たる資質(アスクリプション)に変換される。


   この世にも不思議な変換がなされる理由は、
   現代日本独特の階層の特性に見出される。
   日本においては、企業などの機能集団が、
   同時に共同体になってしまっている。
   これが現代における根本的な社会学的特徴である。
                    (pp.250-251)


社会制度(教育制度を含む)が一夜で変わらない以上、
個人としてどう対処するか。
その処方箋が気になるところだ。
少なくとも課題がどこにあり、何が解決していないか把握できれば
地雷原を除けて進むことはできるだろう。


(公立図書館で小室直樹著書アーカイブは充実している。一読を勧める)


(現代の教育問題の知見をアップデートするのに役立つ佐藤・池上コンビの新刊)