不正の動機が分からないままだ

この事件、朝日の記事を読んだ以降、
どうなっているのか気になっていた。
スクラップブックから
讀賣新聞2019年5月10日朝刊
東洋英和トップ研究不正
調査委 著書に捏造 認定


   東洋英和女学院大(横浜市)が、
   同大を運営する学校法人・東洋英和女学院(東京)の院長で、
   同大教授(近代ドイツ宗教思想史)の深井智朗氏(54)について、
   研究上の著作に捏造(ねつぞう)などの不正があったと認定したことがわかった。
   同大は昨年、外部からの指摘を受けて調査委員会を設置し、調査を進めていた。
   10日に記者会見を開いて結果を正式発表する。


   深井氏は読売新聞の取材に
   「研究不正をしたとは考えていない」と主張する一方、
   「(調査対象になり)学院の教育活動を妨げた」として、
   すでに同女学院側に辞意を伝えたと言う。


   不正があったとされたのは、
   2012年に刊行された深井氏の著書
   「ヴァイマールの聖なる政治的精神」(岩波書店)と、
   15年に雑誌「図書」(同)に掲載された論考
   「エルンスト・トレルチの家計簿」。



   小柳敦史・北海学園大准教授(ドイツキリスト教思想史)が昨年9月、
   学会誌に公開質問状を掲載し、これらの著書や論考の一部に
   「創作の疑いがある」と指摘した。
   (略)


   深井氏は今回の調査対象となった2作品とは別の著書
   「プロテスタンティズム」(中公新書)で、
   2018年に「読売・吉野作造賞」を受賞した。
   同賞を主催する読売新聞社は、
   深井氏の不正疑惑が発覚した昨年秋以降、
   同氏の受賞に問題がなかったかどうか慎重に調査・検討を進めてきた。



   今年1月上旬には担当者が深井氏と面会し、
   不正の疑いを指摘された著作についてヒアリングを行ったところ、
   深井氏は不正を明確に否定した。


   一方、受賞作「プロテスタンティズム」については、
   グループ会社で出版元の中央公論新社が研究者2人に内容の精査を依頼。
   一部論述に粗い点があるとされたものの、不正の指摘はなかった。


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東洋英和女学院ホームページの調査結果を参照する限り、
調査委員会の報告は公正に見える。
調査報告別添資料2で
W.パネンベルク著 近藤勝彦・芳賀力訳『組織神学の根本問題』
日本基督教団出版局、1984)と深井氏著作の比較対照表を初めて目にした。
氏が著書で引用と断っていないにも関わらず、似ている表現が余りに多い。
調査委員会に「盗用」と判断されてもやむを得ないと思えた。
深井氏の動機は不明のままだ。


調査報告を受け、
岩波書店は『ヴァイマールの聖なる政治精神』出荷を停止。
アマゾンマーケットプレイスでは、
既に価格が18,000〜36,000円に高騰していた。
どんなときにも抜け目ない商売に励む人たちがいる。


組織神学の根本問題 (1984年)

組織神学の根本問題 (1984年)


<続報から> 2019.5.19追記
朝日新聞2019年5月11日朝刊


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朝日新聞2019年5月14日朝刊


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朝日新聞2019年5月18日朝刊


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深井氏との共著がある佐藤優さんのこの事件に対する見解を
訊きたいと思っていた。
以前メルマガ「佐藤優直伝・インテリジェンスの教室」の質疑応答欄で
質問したときは「第三者委員会の報告が出てから判断しても遅くない」
との回答だった。
産経に以下の記事が掲載された。


産経新聞2019年5月19日
「佐藤優の世界裏舞台」


2019.6.18追記:


深井氏の研究不正について最初に公開質問状を送った
小柳敦史北海学園大学准教授へのインタビュー。
(クリスチャン・プレスとキリスト新聞による。全3回)