小室直樹/山本七平『日本教の社会学』(ビジネス社、2016/講談社、1981)

「戦後日本は民主主義国家ではない」と言われたら、
「何を言っているんだろう」と思うだろう。
さらに「戦前日本は軍国主義国家ではない」と続けられたら、どうだろう。
小室直樹山本七平日本教社会学—戦後日本は民主主義国家にあらず』
(ビジネス社、2016/講談社、1981の再刊行)を読む。


日本教の社会学

日本教の社会学


本書を精読していくと、著者たちの言説が
あながち間違っていないのではないかとジワジワ思えてきた。
小室の「まえがき」から引用する。


   かたちは対談になっているが
   一読すればおわかりいただけると思うが、
   日本式対談とはぜんぜん違う。
   山本七平氏と小室との共同作業である。
   科学の定石である、分業と協業(ディヴィション・オブ・レーバー・
   アンド・コオーディネーション)に基づく作業である。


   まさに知的興奮に満ちた研究室そのものであった。
   討論に熱中している間に、気がついてみたら、
   いつの間にか十八時間も二十時間も経ってしまっていることも
   珍しくなかった。
                            (p.4)


   ところで、山本学こそ典型的な構造機能分析であり、
   山本学を理解するということは、同時に、
   社会学の中心理論である構造機能分析の理解ということにもなる。
   そのために、日本教の神学をつくりあげるという戦術をとった。
                            (p.4)


本書第2部は「神学としての日本教」と題される。
キリスト教神学の概念である教義(ドグマ)、救済儀礼サクラメント)、
神義論(デオデイツェー)、ファンダメンタリズム
日本教」に当てはめ、小室、山本の二人が討論し分析していく。


日本社会で暮らし、仕事をしていく日々で
自分たちが今でも「日本教」という宗教の枠内で
思考・行動しているのではないかと思えてくる。
「実体語」が疎まれ、「空体語」が好まれ、
人間関係を「空気」が支配する宗教だ。
今こそ文庫にして広く読まれるといい本だ。


日本教の社会学 (1981年)

日本教の社会学 (1981年)

「空気」の研究 (文春文庫)

「空気」の研究 (文春文庫)

wikipedia:山本七平