小室直樹『奇蹟の今上天皇』(PHP研究所、1985)

社会学者・橋爪大三郎が『小室直樹の世界—社会科学の復興をめざして』
ミネルヴァ書房、2013)に書いている。
橋爪は小室の愛弟子のひとりである。


   小室博士の関心を惹きつけた人物が、戦後日本に三人いる。
   昭和天皇田中角栄、そして三島由紀夫である。
   この三人には共通点がある。
   いずれも、官僚機構(日本国)の外側に立っていて、
   しかも、日本を救おうと個人として決然として行動していること。
                             (p.78)



小室直樹『奇蹟の今上天皇』(PHP研究所、1985)を読む。
以下の各章で構成されている。


   プロローグ 奇蹟の預言者
   第一章 なぜ、奇蹟なのか
   第二章 地方巡幸—天皇人気の証明
   第三章 将軍は去り、天皇は残った
   第四章 日本人は「天皇教」徒だ
   第五章 奇蹟の今上天皇
   第六章 偉大なる帝王の秘密
   第七章 天皇政治責任はない


奇蹟の今上天皇

奇蹟の今上天皇


小室の著書はタイトルには人を「ギョッ」と驚かせるものがある。
(編集者が本を売るために付けたものも多数あるだろう)
中味は至ってまともで、アカデミックである。
古典、法律を自在に駆使・引用し、
論理立てて自分の見解を構築していく。
だから、分かりやすい。


僕はこれまで天皇のことを深く考えた訳でもなかったが、
昭和天皇がどんな方だったのか。
2.26事件、太平洋戦争終結の時に天皇の断固とした判断がなければ、
いまの豊かな日本があったのか。
歴史に「もし」はなくとも、
どうしても考えてみたくなる。
天皇について考えることを
自分でも無意識にタブー領域に入れているように思える。
なぜだろう?


平成から令和に元号が変わったこの機会に
じっくり読む価値のある一冊だ。