池上彰『おとなの教養2—私たちはいま、どこにいるのか?』(NHK出版新書、2019)


世の中で起きている大切なことを分かりやすく解説してくれる
ジャーナリスト・池上彰さん。
その本質は硬派である。ヤワでない。
好評だった『おとなの教養』(NHK出版新書、2014)続編、
『おとなの教養2—私たちはいま、どこにいるのか?』
NHK出版新書、2019)を読む。



「おわりに」から引用する。


   人間としての教養を学びたいのは
   大学生だけではないはずです。
   多くの社会人もまた、
   学生時代に得られなかった教養を欲しているのではないか。
   そんな問題意識から書いたのが
   前著である『おとなの教養』です。
   2014年に出た後、幸いにも多くの読者を得て、
   いまも版を重ねています。



硬派・池上さんの矜持が感じられるのは次の一節。


   その後、「教養」という言葉が入った書籍も
   多数出版されるようになりました。
   たいへん嬉しいことではあるのですが、
   単なる雑学に留まるような種類のものも紛れるようになりました。


   もちろん豊富な知識があってこそ、教養の体系は築かれますし、
   「人間を自由にする」リベラルアーツが身につきますが、
   雑多な知識の山だけでは、
   人間としての自分の生き方を考えるには不十分でしょう。
   あらためて自分の立ち位置を確認する。
   それに資する材料を提供しようと、続編を出すことにしました。
                         (p.236-237)


謙虚な物言いをしていても、
雑学を集めた類書と自分の著書を同じ「教養」という言葉で
一括りにはしないでほしいという自信が見られます。
読者としては頁を繰る期待が高まります。


本書の構成は以下の通り。


   序章 私たちはいま、どこにいるのか?
   第一章 AIとビッグデータ—人間には何が残されているのか?
   第二章 キャッシュレス社会と仮想通貨—お金はどう変わろうとしているのか?
   第三章 想像の共同体—なぜ民族紛争が起こるのか?
   第四章 地政学—地図から見える大国のホンネとは?
   第五章 ポピュリズムブレグジットとトランプ現象をどう読むか?
   第六章 日本国憲法—何がいま、焦点になっているのか?
   文献案内 (1) さらに学びたい人のために
        (2) 主要参考文献
   おわりに


同じテーマを扱っていても
佐藤優さんと視点や論点が異なっている箇所が随所にあり、
連読でさらに「教養」を深掘りできます。


出版社担当:大場亘
編集協力:松尾豊/斎藤哲也
NHK文化センター青山教室講義を元に再構成
『試験に出る哲学』(NHK出版新書、2018)著者・斎藤哲也
編集者として前著に続いて協力。
文献案内が丁寧で、ここからの連読も可能だ。