朱野帰子『真壁家の相続』(双葉社、2015)


何冊か読むうちに、「ああ、この人はうまい人なんだなぁ」と分かった。
『わたし、定時で帰ります』一作で消えてしまう作家ではない、と。
朱野帰子『真壁家の相続』(双葉社、2015)を読む。


真壁家の相続

真壁家の相続


主人公の女子大学生・真壁りんの祖父・麟太郎が
ある日、ポックリ亡くなる。
麟太郎は以前米穀店を経営。
持ち家だったものの、さほどの資産を持つわけでもない市井の人だ。
和気あいあいと暮らしていたはずの親族が
麟太郎の遺産をめぐってギクシャクし始める。


法律を勉強しているりんは教科書と実用本を片手に
なぜか祖父の元で居候していた小説家・植田大介とともに問題解決に追われる。
平穏時には水面下に隠れていた人間同士の摩擦が
やがて衝突となって出現し始める。
りんは出口を見つけることができるのか。
物語の中でりんの母・容子がいい味を出している。
従順で流れに逆らわない母はいったい何を考えているのか。


双葉社は柚木麻子といい、朱野帰子といい、
新進女性作家に活躍、飛躍の舞台を与えるのがうまい。
慧眼の編集者がいるのかもしれない。
初出『小説推理』(2014)


わたし、定時で帰ります。 (新潮文庫)

わたし、定時で帰ります。 (新潮文庫)

ランチのアッコちゃん (双葉文庫)

ランチのアッコちゃん (双葉文庫)