朱野帰子『海に降る』(幻冬舎、2012)

2009年、『マタタビ潔子の猫魂』でデビュー。
第4回ダ・ヴィンチ文学賞大賞受賞第一作。
まったく異なるジャンルに挑戦した創作意欲に驚く。
朱野帰子『海に降る』(幻冬舎、2012)を読む。


海に降る

海に降る


主人公・天谷深雪(あまがい みゆき)は
独立行政法人海洋研究開発機構(JAMSTEC)に勤務する訓練生。
有人潜水調査船コパイロット昇格をめざしている。
四年前に母が亡くなり、父は再婚してアメリカ在住。
再婚相手の息子、小学生の北里陽生(きたざと はるき)が
深雪の働く横須賀に突然訪ねてくることで物語が転がり始める。


実在するJAMSTEC関係者への取材、耐圧殻に自ら入る実地体験、
幻冬舎編集・篠原一朗の伴走、
そうした積み重ねがこのフィクションが誕生させたことは
「謝辞」(p.327)に記されている。
朱野がなぜ深海に挑む人間たちを小説に書きたかったのか。
その動機を考えてみたくなる。
楽しみな作家だ。


海に降る (幻冬舎文庫)

海に降る (幻冬舎文庫)

(文庫も出ています)