朱野帰子『会社を綴る人』(双葉社、2018)

地味な物語である。
それでも最後まで読ませる力がある。
朱野帰子『会社を綴る人』(双葉社、2018)を読む。


会社を綴る人

会社を綴る人


主人公の紙屋くんは何の取り柄もないと自分では思っている。
唯一自慢できるのは作文コンクールで佳作を取った文章力だ。
フリーターで暮らしていたが、このまま家族の足手まといになるのはイヤだと
リクルート会社の助けを借りて面接に出掛ける。


紙屋くんを拾ってくれたのは最上製粉。
食品会社に卸す小麦粉の精製が主な業務の老舗で、社員約200名。
総務部正社員。年収額面420万円。福利厚生完備。
入社後、紙屋くんはありとあらゆる失敗を繰り返す。


けれど、彼にはひとつだけ突破口があった。
文章力を活かして社内文書に取り組むことだった。
他の本を読むのに疲れて朱野作品に帰ってくると
なんだかホッとする。
人物描写がいいのかな。


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  初出:「小説推理」2017年10月号〜18年2月号
     単行本化にあたって加筆修正