古谷田奈月『神前酔狂宴』(河出書房新社、2019)

クリッピングから
朝日新聞2019年8月1日夕刊
「虚飾」に尽くす快感と危うさ
古谷田奈月さん「神前酔狂宴」


  婚礼、軍神、国家。
  厳かな言葉は、小説を読むとひっくり返る。
  古谷田(こやた)奈月さんの『神前酔狂宴(しんぜんすいきょうえん)』
  (河出書房新社)は、それらの核心にある空虚さに触れようとする長編だ。
  (略)


  古谷田さん自身、数年前に神社併設の結婚式場で働いていた。
  各自の宗教に関係なく、拝殿前を通るときに
  スタッフは一礼するというルールは実際のもの。
  「一瞬、何に頭をさげているのだろう、と疑問に思う。
  心を殺して従っていました」。
  (略)


  「大きな力の周りにいる人々はすごく気になります。
  不思議にも見える。
  私はもともと小説を書く人間だとわかっているから迷いはないのですが、
  不安なのかな。
  信じるものがほしいんだと思う。
  大きな力に身をゆだねず、自分自身の心と向き合うことが大事だと思います」
                            (中村真理子


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朝日文芸欄・中村真理子記者の署名記事
見つけるとたいがい読んでいる。
あくまで作品、作家に寄り添いながら、
反戦、平和に続く道標をさりげなく提示しているように思う。
僕が夕刊紙に目を通す理由のひとつになっている。


神前酔狂宴

神前酔狂宴