自己責任論の行き着く果てを感じる(平野啓一郎)

クリッピングから
朝日新聞2019年7月31日夕刊
生きにくい社会へ メッセージ


  小説家による、メッセージ性の強いエッセーが相次いだ。
  中村文則さんの『自由思考』(河出書房新社)と、
  平野啓一郎さんの『「カッコいい」とは何か』(講談社現代新書)。
  どちらも現代社会への警鐘と、息苦しい時代を生き抜くヒントがある。
                           (中村真理子


  感情を揺さぶるモノサシ その正体は
  「『カッコいい』とは何か」 平野啓一郎さん

  (略)
  「生まれてきてから今日まで世の中は生きにくいと感じてきた。
  文学はそんな僕にとっての救いだった」。
  小説の傍ら、SNSでニュースや社会問題に反応した日々の発信も行う。
  「生きるということを考えれば、
  どうしても社会システムと関わらざるを得ない。
  だから社会的な発言を行うのは自然なこと」


  社会と個人の関係については、
  「若い人たちを見ていて、自己責任論の行き着く果てを感じる」とも。
  「社会と自分を切断している。
  社会は安定していて、自分の状況は自己責任だ、と。
  そう思わせている構造自体が
  日本社会の不安定さを何よりも示しているのですが、
  人間の一生が社会構造に大きく左右されるという理解が不足していることに
  問題を感じています」


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僕の回りにも平野啓一郎作品の読者が何人もいる。
20代から80代まで幅広い支持がある。
中村のインタビューに答える平野の発言を読んでいると、
視野が広く、地に足がついた人なんだな、と思えた。