金融庁報告書提言「本音が出ましたね」(池上彰)

この問題もやっぱり池上さんが掘り下げ、
分かりやすく解説してくれました。
クリッピングから 週刊文春2019年8月8日号
池上彰のそこからですか!?
連載395〘金融庁の報告書は何を書いたのか〙


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   参議院選挙前に突如として浮上した
   「年金だけでは2000万円不足する」という騒動。
   引き金になったのは、
   6月3日に金融庁の金融審議会が出した報告書の文言です。
   (略)


   結局、問題の報告書は闇に葬られてしまいました。
   そこで今週は、そもそも報告書には何が書かれていたのか、
   発掘してみましょう。
   報告書の正式名称は<金融審議会市場ワーキング・グループ報告書
   「高齢社会における資産形成・管理」>というものです。
   メンバーには経済学者や投資会社の関係者などが名を連ねていますが、
   「読売新聞東京本社論説副委員長」の名前もあります。
   (略)


   この報告書でとりわけ力を入れて書かれているのは、
   認知症の人の増加にどう対応すべきか考えるべきだ、ということです。
   年をとって判断能力が衰えると、
   それまで蓄えた資産の管理ができなくなります。
   その対策が重要な課題だと提起します。
   (略)


   つまり、「年金だけでは足りない」というのは、
   すでに政府の各種調査によって明らかになっていることです。
   それを報告書が正直に書いたので、問題になったのです。
   では、どうするのか。
   報告書では、不安な将来に備えて、
   現役世代にこんなアドバイスをしています。


   「早い時期からの資産形成の有効性を認識する」
   「生活資金やいざというときに備えた資金については
   元本の保証されている預貯金等により確保しつつ、
   将来に向けて少額からでも長期・積立・分散投資による資産形成を行う」
   「自らにふさわしいライフプラン・マネープランを検討する
   (必要に応じ、信頼できるアドバイザー等を見つけて相談する)」


   本音がでましたね。
   メンバーに投資関係関係者が多くいるのは、
   こういう提言をしたかったからです。
   「年金だけだと生活が苦しいから投資をしよう」という
   我田引水の提言のために年金不足を赤裸々に書いたら、
   政権に不都合だったのです。


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池上さんの発掘法から学ぶことは以下です。


   1. オリジナル資料にあたる。
    (もしくは、オリジナル資料の引用に基づく意見を聴く
     =この記事を読むのもそのひとつの方法です)。
   2. 委員会のメンバーが伝えたかった本音のメッセージを抽出する。
   3. なぜ政権がこの報告書を不都合として闇に葬ったか
    (その気になれば、僕たちはこうしてオリジナル資料を読めるわけですが)、
     その内在論理を要約する。


ちなみに報告書本文にある
「長期・積立・分散投資による資産形成」について
経済ジャーナリスト・荻原博子さんが
『年金だけでも暮らせます—決定版・老後資産の守り方』
PHP新書、2019)にこう書いています。


   素人(しろうと)をだます投資の3大用語


   投資をしたことがない人を投資に誘い込むには、
   素人が「そうなのか」と思うような、説得力のある言葉が必要です。
   私は、それが「分散投資」「長期投資」「積立投資」という3つの言葉だ、と思います。
   投資に一度でも興味を持った方なら、聞いたことのある言葉だと思いますが、
   そこには何が隠されているのでしょうか。
   (略)


   けれど、素人こそ、
   「分散投資」「長期投資」「積立投資」という3つの言葉にだまされてはいけません。
   さらにいうなら、初心者が、この3つの言葉を鵜呑(うの)みにして
   投資すると危険とさえ思います。
   その理由を次ページから1つずつ見ていきましょう。
   (略)



こうして池上さんの記事、荻原さんの著書を読み、
それらの知識、見解を基に考えてみます。
すると、今回の「年金だけでは2000万円不足する」問題について
自分の現時点での考えがまとまります。
その後に違う情報、知見が出てきたら、
自分の考えを修正するか、そのままにしておくか決定。
その時点での考えとして更新します。