半藤一利・池上彰『令和を生きる—平成の失敗を越えて』(幻冬舎新書、2019)

単行本対談としては初顔合わせではないか。
半藤一利池上彰『令和を生きる—平成の失敗を越えて』
幻冬舎新書、2019)を読む。



池上さんの「おわりに—「歴史探偵」との対話」から引用する。


  昭和史のことなら半藤さんに聞け。
  「歴史探偵」とも呼ばれる半藤さんは、
  戦争へと進んでしまった昭和史についてじつに詳しい。
  その半藤さんと、平成について語り合う。


  そう言えば、半藤さんは、
  平成の時代について、あまりコメントされていない。
  出版社は、なかなかのアイデアを出してきました。
  半藤さんと語り合えるならぜひ、
  というわけで、この本が誕生しました。
                        (p.222)


池上さんは前口上が得意だ。
読者(あるいは立ち読み客)をその気にさせて、
本文を読んでみよう、お金を出して購入しようと次の行動を促す。
東工大シンポジウムに出掛けたときのことだ。
予想外の数の聴衆が集まり、
帰っていただくのも申し訳ない。
第二、第三、第四会場まで急ごしらえすることになり、
開演時間が大幅に遅れた。


そのとき、講師のみなさんが登壇し、
池上さん司会で想定になかった「前口上」が始まった。
会場設営のための時間稼ぎと同時に、
第一会場で待ちぼうけしている僕たちのためへのサービスだったのだ。
もちろん第一会場聴衆は大喜び。
池上さんの機転に感心し、
ああ前口上にはこんな使い方もあるのだな、
と自分の勉強にもなった。


以下、本書目次の章立てを紹介する。
ふたりの対話のリズムがよく、意見を裏付ける知見が豊富。
どの章も独立した読み応えがある平成史だった。


  第一章 劣化した政治、最初の岐路
  第二章 災害で失われたもの、もたらされたもの
  第三章 原子力政策の大いなる失敗
  第四章 ネット社会に兆(きざ)す全体主義
  第五章 誰がカルトを暴発させたのか
  第六章 「戦争がない時代」ではなかった
  第七章 日本経済、失われつづけた三〇年
  第八章 平成から令和へ—日本人に天皇制は必要か


本書を実現した舞台裏のお二人。


  編集:小木田順子(幻冬舎
  構成:石田陽子


昭和史-1945 (平凡社ライブラリー)

昭和史-1945 (平凡社ライブラリー)

昭和史戦後篇 (平凡社ライブラリー)

昭和史戦後篇 (平凡社ライブラリー)

(半藤昭和史の定番二冊。編集者への講義形式で読みやすい)
平成史 (小学館文庫)

平成史 (小学館文庫)

(平成史について連読するならこの一冊が充実)