副島隆彦『国家分裂するアメリカ政治 七転八倒』(秀和システム、2019)

橋爪大三郎副島隆彦との対談の最後にこう語っている。
(『小室直樹の世界—社会科学の復興をめざして』
ミネルヴァ書房、2013)所載)


  それにしても、小室先生のちょっと危ない部分を、
  副島さんはよく引き継いでいるのですね。
  もともとの素質が共鳴しているかも。
  どうも私は、自分のノーマルな部分に退屈しているので、
  ちょっと危ない知性にひかれる傾向があるみたいです。
  どうぞお体に気をつけて、末永く活躍ください。
               (2013年3月12日/同書pp.292-293)



二人とも伝説の小室ゼミの門下生である。
小室直樹のちょっと危ない部分」を引き継いだ副島隆彦の新刊、
『国家分裂(デヴァイデッド)するアメリカ政治 七転八倒(しちてんばっとう)』
秀和システム、2019)を読む。



「まえがき」から引用する。


  私は日本人としては有数(ゆうすう)の
  アメリカ政治の研究者(エキスパート)である。
  この私がアメリカ政治のことを書く、というのだから、”堂に入っている”。
  だから、この本の書名も「トランプのアメリカ政治」と決めた。


  ところが、出版社から「トランプは止(や)めてください。
  書店に並べたとき本が売れないので」と言われた。
  失礼な話である、この私に向かって。
  トランプ大統領のことを含めて私が、アメリカの最新の知識で書く、
  というのだから、そのまま通る、と思っていたら、これである。
  私はヘソを曲げた。
  だから、そのあと1ヵ月、私はこの本を書くことを放ったらかした。


  しかし、それでは担当編集者が出版社との板ばさみになって困っている。何とかせねば。
  それで急遽(きゅうきょ)、えーい、分かったよ。それならこうする。
  で、"The US is divided."「ザ・ユーエス・イズ・ディヴァイデッド」
  「アメリカは国家分裂しつつある」をドカーンと書名に持って来ると、決めた。
  (略)
                                      (p.3)


  アメリカ合衆国はやがて世界覇権(はけん)
  (ワールド・ヘジェモニー world hegemony)を失う。
  そのとき、アメリカ合衆国は分裂国家(おそらく3つ)になる。
  としても、それは10年先のことである。
  The US shall be disbanded.
  「ザ・ユーエス・シャル・ビー・ディスバンデッド」とも言う。


  ① ニューヨークを中心とした「東部(イースト)アメリカ」。
  ヨーロッパ白人社会と生きてゆく。
  ここには、シカゴを含めた中西部(ミッドウエスト)の北の方(ノース)が入る。


  ② テキサス州を中心とした農業国の「中央(センター)アメリカ」。
  ここで、”ブルーステイト"(米民主党支持者が多い)である
  ケンタッキー州とサウス・カロライナ州が①と②のどっちに付くか、でモメるだろう。
  南北カロライナ州は合体する(元に戻る)だろう。


  実は、ノース・カロライナ州とサウス・カロライナ州は、
  南北戦争(ザ・シヴィル・ウォー)(1861-1865)の時に、
  それぞれ北軍(連邦派/フェデラル)と、
  南軍(南部同盟/コンフェデレット)側に付いて分裂した。
  あの南北戦争(シヴィル・ウォー)(内乱、内戦)のときの影が
  いまもこの国に深く差しているのだ。


  ③ カリフォルニア州を中心とした「西部(ウェスターン)アメリカ」。
  太平洋側に面してアジア諸国に近いので、そこからの移民が多い。
  この③の国は、大衆的リベラル派として
  アジア諸国と付き合い(貿易)しながら、生きてゆくだろう。
                            (pp.6-7)


副島は2016年、米大統領が決まる4ヵ月前に
著書『トランプ大統領アメリカの真実』(日本文芸社、2016)で
トランプ当選を予言した。
ディヴィッド・ロックフェラーとヘンリー・キッシンジャー
トランプ抜擢を決めたというのが推測の論拠だった。
その副島が本書で、10年後にアメリカ合衆国が3つに分裂すると予言し分析している。


トランプ大統領とアメリカの真実

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