香山リカ『オジサンはなぜカン違いするのか』(廣済堂新書、2019)

「自分は違うだろう」と信じたくても、
読んでいくうちにドキッとするんだなぁ、これが。
香山リカ『オジサンはなぜカン違いするのか』(廣済堂新書、2019)を読む。



目次を引用する。
各章のタイトルに、カン違いオジサンの台詞がひとつずつ付いている。


  第1章 パワハラオジサン
  「叱ってもらえるだけありがたいと思え!」


  第2章 キレるオジサン
  「ホントのオレはもっとスゴいんだゾ」


  第3章 情弱オジサン
  「キレイだし動画だしスゴイなぁ」


  第4章 セクハラオジサン
  「彼女もまんざらでもなさそうだったし」


  第5章 文化系説教オジサン
  「オジサンが”手取り足取り”教えてあげよう」


  第6章 上昇志向オジサン
  「苦労したんだから多少の役得はネ」


  第7章 子ども部屋オジサン
  「母さん、ボクのご飯まだ?」


香山さんは男性を一方的に糾弾する姿勢は取らない。
「おわりに」から引用する。


  もちろん、私も自分が
  ”おとなでステキなオバサン”になれているとは思っていません。
  鎌田さん(引用者注:鎌田實。医師、作家)の言う
  アンガー・マネジメントもできないときがありますし、
  先ほども言ったように若いときからの趣味をダラダラと楽しんで
  それで満足している面もあります。

 
  ただ、「これでいいのだ」と開き直ることはせずに、
  「私にとって、”おとなになる”とは何か」と考え続け、
  「これかな」と思ったらそれをやってみよう、とは思っています。


  先ほどの中国語学習もそのひとつです。
  最近、病院には中国人の患者さんが来る機会が増え、
  その人たちは日本語がとても上手だとはいえ、
  ひとことでも中国語で話しかけることができたら
  安心してくれるのではないかな、と思ったのがそのきっかけです。
  (略)


  どうすれば、本当のおとなになれるのか。
  それを考え続けるのが、カン違いオジサンにならず、
  孤独を免れる唯一の道です。


  ”おとな道”には終わりがない。
  それはたいへんなことですが、
  いつか日本中に個性豊かなおとなのオジサンたちがあふれているかも、
  と想像すると、とても楽しみです。
  (略)
                      (pp.213-214)


香山さんは精神科医としての豊富な臨床体験を元に
オジサンたちにエールを送ってくれているんですね。
抽象的でなく具体的な指摘が随所にあって
軌道修正の参考になりますよ。


部長、その恋愛はセクハラです! (集英社新書)

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(香山さんも第4章で牟田さんの本から引用しています。連読でどうぞ!)