副島隆彦『決定版・属国 日本論—2つの帝国の狭間で』(PHP研究所、2019)

作家・評論家の副島隆彦さんが主著と自認する著作に決定版が出た。
書店で拾い読みしたところ、主著だけあって本文には手を入れていない様子。
では図書館で借りて、あらたに書き加えた箇所だけ読むことにしよう。
副島隆彦『決定版・属国 日本論—2つの帝国の狭間で』
PHP研究所、2019)を読む。


決定版 属国 日本論

決定版 属国 日本論


1997年初版の冒頭の文章を引いてみる(本書にも掲載)。


  この本は、決して日本国を貶(おとし)めるために書かれたものではない。
  日本人がこの国を、勝手に立派な大国だと思い込んでいること自体が、
  日本の危機だと思う。
  私たちは、自分たちの足元を見つめ、
  決して威張らないで着実に生きてゆく国民でなければならない。
  事実を冷酷に見つめるところから、次の対策が次々に生まれてくる。
  私は、自分の生まれ育った国を深く愛するが故に、属国 日本論を唱える。


次に「決定版を出すにあたって」から引用する。


  この「決定版」では「アメリカと中国の、2つの帝国の狭間で」と書く。
  ただし、この本には、中国が経済的、軍事的、政治的にさらに膨張して、
  アメリカを追い落とす勢いになっている問題は書いていない。
  それらは私が近年、書いてきた他の本を読んでいただきたい。


  私は、この本の内容にあまり手を入れたくない。
  なぜなら、この本は、
  古典(クラシックス)の一冊の数えられるべきだからである。
  20年以上前に書かれた本であるから、
  内容が古くなっていることと同時に、
  その後の進展という問題がどうしてもある。
                        (p.346)


  西暦1860年代の明治維新から、
  密かにイギリス(大英帝国)の従属国にさせられた。
  そして太平洋戦争(第2次世界大戦)の敗戦から後は、
  アメリカ合衆国の属国として生きてきた。
  この厳然たる事実を、私たちは、はっきりと認めなければいけない。


  私たちは、再び2000年前の中国帝国の属国(朝貢国)に戻っていくのか、
  という大きな問題に直面している。
  アメリカ帝国が衰退して、力がなくなっていけば、
  日米安全保障条約だって解消、解約されていく運命にある。


  その前に、米韓安保条約が解約されて、
  アメリカ軍は韓国から撤退していくであろう。
  その時に、私たちはどのように日本国のあり方を選択していくか、を
  今のうちから議論しなければいけない。
                         (pp.352-353)


この『決定版・属国 日本論』を軸として、
中国に関する副島さんの知見を並行して読んでいこうと思う。
「2つの帝国の狭間で」生きる日本の行く末を自分なりに考えてみたい。


(副島さんがもう一冊の主著と位置づけるのが本書)


米中激突 恐慌-板挟みで絞め殺される日本 (Econo-Globalists 22)

米中激突 恐慌-板挟みで絞め殺される日本 (Econo-Globalists 22)

(本書と連読すると面白そうな近著。図書館に予約を入れてある)