クリッピングから
週刊ダイヤモンド2020年1月11日新春号
知を磨く読書(佐藤優)第327回
ドイツ民主主義の近未来
ウルリヒ・メーラート著『東ドイツ史 1945-1990』
(伊豆田俊輔訳、白水社、2800円)を読むと、
現下ドイツの構造問題が1990年のドイツ再統一(平和革命)に
起因することがよく分かる。
<東側では、自分たちが政治的には重要ではなく、
ある種の請願者に似た役割に甘んじる
「二級の」ドイツ市民だという感覚が広まった。
東では信託公社が経済的な転換プロセスの象徴になった。
ここでは西の企業家が東ドイツ経済の民営化から利益を収め、
この反面で市民がその費用を支払わねばいけなかった。
東側への市場経済の導入によって
西側地域においては、社会福祉的な要素を含む経済の形
[西ドイツの社会的市場経済] が時代遅れに見えるような風潮が現れた/
平和革命から20年がたち、
ドイツ人は、度重ねて誓ってきた精神的な統一を
依然として達成していない>。
旧東ドイツ地域では
「ドイツのための選択肢」のような右翼政党が台頭しているが、
近未来にドイツの民主主義が危機に直面するかもしれない。
作家になった今も
日々6時間の読書でインプットを怠らない佐藤優さんは
僕が信頼する読書家のひとりだ。
この5年間、佐藤さんに推薦してもらった書籍から
生きる養分、考える養分をどれだけ得てきたか。
(重版出来。日本の読書人層は頼もしい)
今週の『東ドイツ史 1945-1990』も気になった一冊。
読書リストに入れておく。
- 作者:ウルリヒ・メーラート
- 出版社/メーカー: 白水社
- 発売日: 2019/11/26
- メディア: 単行本