ウルリヒ・メーラート『東ドイツ史 1945-1990』(白水社、2019)

クリッピングから
週刊ダイヤモンド2020年1月11日新春号
知を磨く読書(佐藤優)第327回
ドイツ民主主義の近未来


  ウルリヒ・メーラート著『東ドイツ史 1945-1990』
  (伊豆田俊輔訳、白水社、2800円)を読むと、
  現下ドイツの構造問題が1990年のドイツ再統一(平和革命)に
  起因することがよく分かる。


    <東側では、自分たちが政治的には重要ではなく、
     ある種の請願者に似た役割に甘んじる
     「二級の」ドイツ市民だという感覚が広まった。
     東では信託公社が経済的な転換プロセスの象徴になった。
     ここでは西の企業家が東ドイツ経済の民営化から利益を収め、
     この反面で市民がその費用を支払わねばいけなかった。


     東側への市場経済の導入によって
     西側地域においては、社会福祉的な要素を含む経済の形
     [西ドイツの社会的市場経済] が時代遅れに見えるような風潮が現れた/


     平和革命から20年がたち、
     ドイツ人は、度重ねて誓ってきた精神的な統一を
     依然として達成していない>。


  旧東ドイツ地域では
  「ドイツのための選択肢」のような右翼政党が台頭しているが、
  近未来にドイツの民主主義が危機に直面するかもしれない。


f:id:yukionakayama:20200108152559j:plain:w550


作家になった今も
日々6時間の読書でインプットを怠らない佐藤優さんは
僕が信頼する読書家のひとりだ。
この5年間、佐藤さんに推薦してもらった書籍から
生きる養分、考える養分をどれだけ得てきたか。


f:id:yukionakayama:20200112125130p:plain:w300
(重版出来。日本の読書人層は頼もしい)


今週の『東ドイツ史 1945-1990』も気になった一冊。
読書リストに入れておく。


東ドイツ史1945-1990

東ドイツ史1945-1990