ジェンガみたいに言葉をかわす(えんどうけいこ)

クリッピングから
讀賣新聞2020年1月13日朝刊
読売歌壇(俵万智選)


最優秀句ではこの一句。


  お互いの様子ばっかりうかがって
  ジェンガみたいに言葉をかわす


         狭山市 えんどうけいこ


  【評】斬新な比喩だ。積み上げた木片で作ったタワーを、
     崩さぬように、そっと抜き取るジェンガ
     関係が崩壊しないように、あたりさわりのない言葉を選ぶ様子が、
     みごとに重なっている。


僕は最初に読んだとき「ジェンガ」が分からなかった。
そういう読者もいることを想定して、
俵さんが【評】で簡潔に説明してくれている。
そして再度歌を読むと、
なんだかその場の空気まで伝わってくるようだった。


優秀句ではこの句に苦笑。
「やけに明るい」の「やけに」がいいな。


  寝違えた首が右には曲がらずに
  やけに明るい左の窓辺


         つくば市 岩瀬悦子



  人生の仕上がりの様重ねつつ
  干しただいこん樽に漬け込む


        上野原市 山崎千代子


「干しただいこん」を
人生の仕上がりに例えたシブさが印象に残った。


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考える短歌―作る手ほどき、読む技術 (新潮新書)

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  • 作者:俵 万智
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2004/09/01
  • メディア: 新書