池上彰・増田ユリヤ『現場レポート・世界のニュースを読む力』(プレジデント社、2019)

人と人の化学反応から創造性が生まれる。
その現場を目撃しつつ、その対話に自分自身も入っていくのが楽しい。
池上彰増田ユリヤ『現場レポート・世界のニュースを読む力
—2020年激変する各国の情勢』(プレジデント社、2019)を読む。


現場レポート 世界のニュースを読む力

現場レポート 世界のニュースを読む力

  • 作者:池上 彰,増田 ユリヤ
  • 出版社/メーカー: プレジデント社
  • 発売日: 2019/11/29
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)


池上さんの「はじめに—世界は驚きに満ちている」から引用する。


  この本は ”野生の勘” に導かれて
  世界のさまざまな現場に足を運んでしまう増田ユリヤさんが、
  現場で撮影してきた写真を見ながら世界のことを語ろうというものです。
  国際ニュースを論じる本は多数ありますが、
  実際に現地に足を運び、
  そこに生活する人たちの話をじっくり聞いて伝えるというのは、
  なかなかあるものではありません。


  増田さんは、大きなニュースが伝えられると、
  「本当だろうか」と疑問に思い、
  そこに行きたくてたまらなくなり、飛んで行ってしまうそうです。
  本人は「何の計画もなく現場に行く」と言っていますが、
  そこで出会った人たちの情報から、また新たな取材先が見つかり、
  情報源が拡大していきます。
                          (p.10)


一方、増田さんは
「おわりに—国境を越え、壁を乗り越えて」でこう書いている。


  世界の政治についても、現地に赴いて取材を重ねていくと、
  日本にいるだけでは知りえない新たな発見があります。
  なぜ、アメリカではトランプ大統領が支持されるのか、
  なぜ、イギリスはEU離脱で混迷を極めているのか、
  なぜ、ドイツでは極右政党の支持率が伸びてきたのか……。


  こうした現象に対して、
  そもそも私自身が先入観のかたまりだからこそ、
  自分の持っている価値観と相いれないものがあるからこそ、
  疑問を持ち、その理由を知りたくなる、事実を確かめたくなる。
  だから取材に行くのかもしれません。
  もっとも、取材に出るときには、
  ただ ”野生の勘” だけを頼りに飛び出して行くのですけれどね(笑)。


  そんな私の粗削りな取材の成果を、
  一緒に話をすることによって、
  整理し、補強し、理解を深めてくださるのが、
  私の大先輩である池上彰さんです。
  長年にわたる取材経験に裏打ちされた、豊富な情報と確かな知識、
  誰も真似できない解説力によって、
  私がとってきた情報を「ニュースを読む力」に転化しているのが
  この本なのです。
                         (pp.220-221)



二人とも一匹狼のジャーナリストでありながら、
記者とデスクの理想的関係を築いているように思えた。
本書は雑誌『プレジデント』2018.6.18号から2019.8.30号までの
掲載記事を加筆・修正した内容。
池上・増田の「師弟関係」による著書を
今後も一読者として楽しみにしたい。


増田さんの経歴は以下の通り。


  1964年、神奈川県生まれ。國學院大學文学部史学科卒業。
  27年にわたり、高校で世界史・日本史・現代社会を教えながら、
  NHKラジオ・テレビのリポーター兼ディレクターを務めた。
  現在コメンテーターとして活躍中。


  主な著書に『揺れる移民大国フランス』(ポプラ新書)、
  『新しい「教育格差」』(講談社現代新書)、
  『教育立国フィンランド流教師の育て方』(岩波書店)などがある。
                            (p.223)


新しい「教育格差」 (講談社現代新書)

新しい「教育格差」 (講談社現代新書)

(088)揺れる移民大国フランス (ポプラ新書)

(088)揺れる移民大国フランス (ポプラ新書)

ニュースがわかる高校世界史 (ポプラ新書)

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