下関で安倍派に逆らうと生きていけない(自民党中間派関係者)

クリッピングから
朝日新聞2020年1月31日朝刊
池上彰の新聞ななめ読み
桜を見る会」の深部へ
足で稼ぐ これぞ記者だ


安倍晋三首相主催の「桜を見る会」。
池上さんが取り上げるからには表層では留まらず
「深部」へと向かいます。
毎日のスクープを取り上げました。


  (略)
  この後、26日になって毎日新聞朝刊に、
  記者の思いが感じられる長文の記事が出ました。
  安倍晋三首相主催の「桜を見る会」の参加者に
  首相講演会の会員が増えている理由を首相の地元で取材した結果です。


  <首相の地元、山口県下関市を歩くと、自民党内の激しい政争が
  浮かび上がってきた>というのです。
  そこには安倍派対林派の対立がありました。
  「林」とは林芳生元農林水産相のこと。
  <安倍首相は衆院山口4区(下関市長門市)の選出で、
  林氏は山口選挙区選出の参院議員だが、地盤はやはり下関市だ>
  どうしてこんなことになったのか
  (略)


  しかし、林氏の支援者たちは、林氏に衆院にくら替えして
  総理大臣を目指してほしいという思いがあるといいます。
  衆院議員のままでは総理大臣は事実上、無理だからです。
  (略)


  安倍首相としては、林氏が衆院にくら替えするのを阻止したい。
  そこで2017年の下関市長選挙は、
  「安倍・林の代理戦争」と呼ばれたそうです。
  林氏の系列の現職市長に対して、安倍首相の元秘書が挑み、
  小差で選挙に勝ったのです。
  地元の下関市議(無所属)は、
  安倍首相の元秘書の選挙で「協力してくれた『ご褒美』に、
  桜を見る会が利用されたのでは」と見ているというのです。
  (略)


  しかし、この取材は容易ではなかったようです。
  <桜を見る会について関係者の口は一様に重かった。
  話を聞いた十数人のほとんどは実名での証言を拒み、
  「かん口令が出ている」と言葉を濁す人、
  あえて人目につかない郊外の喫茶店を面会場所に指定してくる議員、
  「(自分の発言は)匿名ぞ、匿名ぞ」と何度も確認する社長もいた>


  そして、こんな証言も。
  <中間派の自民党関係者はこう言った。
  「下関で安倍派に逆らうと生きていけない。ファシズムですよ」>
  この証言に尽きます。
  取材記者の「体温の高さ」が伝わってきます。


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毎日記者のファインプレイを
朝日コラム欄のほぼすべてを使って分析・再現する。
ジャーナリスト池上彰の真骨頂です。
安倍総理、林議員はこの記事をどう読んだのでしょうか。


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