本文二段組み474頁、大部の歴史書であるのに読みやすい。
著者の思考が明晰であり、原文・翻訳が明快だからだろう。
イアン・カーショー/三浦元博・竹田保孝訳
『地獄の淵から—ヨーロッパ史 1914-1949』(白水社、2017)を読む。
「はしがき」から引用する。
本書は、1914年から今日に至るヨーロッパ史に関する二巻本の第一巻である。
これまでにわたしが手掛けたなかで、とりわけもっとも苦労した著作である。
わたしが書いてきたどの著作もある意味で、
過去のなんらかの問題に関して、自らの理解を深める試みだった。
本書が扱う近過去の場合には、極めて複雑な問題が数多く含まれている。
しかし、いかに困難であっても、今日の世界を形成した近過去の諸力について、
より深く理解したいという誘惑には抗しがたかった。
(略)
ペンギンヨーロッパ史叢書の体裁では、
わたしが依拠した多くの必要不可欠な歴史研究業績
—研究論文、諸々の同時代史料集、統計分析、国別の専門研究—
の出典を示すことができない。
参考文献は、わたしが他の学者から受けたいっそう重要な恩恵の一部を示している。
脚注で言及できなかったことをお許しいただき、
労作に対するわたしの深い謝意を受け取っていただければ、幸いである。
したがって、独創性があるとすれば、
それはもっぱら構成と解釈、つまり歴史の書き方と立論の基本的性格にある。
(pp.11-12)
本書に続く『分断と統合への試練—ヨーロッパ史 1950-2017』と併読すれば
ヨーロッパ100年史の鳥瞰図が頭に入ってくる。
市井の人物たち(著者の親戚等を含む)が残した記録を随所に挿入した試みも
人間の歴史として捉える助けになった。
To Hell and Back: Europe 1914-1949 (The Penguin History of Europe) (English Edition)
- 作者:Ian Kershaw
- 出版社/メーカー: Penguin Books
- 発売日: 2015/11/17
- メディア: Kindle版