富岡幸一郎『使徒的人間—カール・バルト』(講談社、1999)

この人の佐藤優さんとの対談本『<危機>の正体』がとても面白く、
これまで学んできた神学を整理するのに役立ったので連読した。
富岡幸一郎使徒的人間—カール・バルト』(講談社、1999)を読む。


〈危機〉の正体

〈危機〉の正体


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「あとがき」から引用する。


  本書で描こうと試みたのは、ひとつの人間像である。
  私は、それを使徒的人間と名づけてみた。
  使徒とはいうまでもなく、新約聖書に報道されている
  イエス・キリストの地上での出来事に、二千年前に立ち合った人々である。
  使徒的人間は、この初代の使徒たちにルーツを持つ。


  さらに、旧約聖書預言者たちに、
  その淵源をさかのぼることが出来るだろう。
  しかし、それは遙かなる過去の人々に関心を向けるということではない。
  預言者使徒たちに始まる、この人間像こそ、
  むしろ、これからの時代の新しい人間像となり得るのではないか、と思われる。


  カール・バルトは、神学者として、
  そのような「来るべき人間」を二十世紀にあって示した。
  いや、彼自身がまさに使徒的人間として生きた。
  その膨大な神学の言葉は、宇宙的な広がりのなかに置かれた
  人類の目標を指し示している。


  それゆえバルトの言葉に拠って、
  私は使徒的人間を描こうとしたのであり、
  本書が未来の思想に関与することができればと願う。


  もとより、神学を批評の対象にすることは、自分の力に余るものだった。
  ただ、1988年に内村鑑三についての小著を書いて以来、
  十年間、私はこの仕事に集中してきた。
  そして、その間、つねに自身の非力を乗り越えさせてくれる、
  多くの人々との出会いがあり、邂逅があった。
  いちいち名前をあげることはしないが、
  一年余りのドイツ滞在をはさむこの歳月を、知的にまた精神的に励ましてもらい、
  この仕事を前進させる力となった方々への感謝の思いを持って振り返るばかりである。


  本書は、『群像』1997年1月号から98年9月号まで、
  21回にわたって連載したものである。
  (略)
  『群像』の新人賞をきっかけに文芸評論を書き始めた者として、
  同誌上で全力投球できたことは何よりの喜びであった。
  (略)


本書によってカール・バルトへの接近を助けられた。
富岡さんは素晴らしいシェルパであった。
これでバルト自身の著作にも挑む準備が整ったと思う。
本書文庫版には佐藤優さんが解説を書いている。
それもぜひ読んでみたい。


聖書をひらく

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内村鑑三 (中公文庫)

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ローマ書講解上 (平凡社ライブラリー)

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