誰一人として数字で表せる存在ではなかった

クリッピングから
讀賣新聞2020年5月25日朝刊
犠牲者1000人実名掲載
NYタイムズ 文字だけの1面


僕はNew York Timesデジタル版を2013年から購読している。
コロナウイルス関連のニュースで目に留まった記事があった。
死亡者1000名の実名、一言紹介を一面全面他で取り上げたのだ。
讀賣の村山特派員が紹介している。


  【ニューヨーク=村山誠】
  米紙ニューヨーク・タイムズは、24日付朝刊の1面全面に、
  新型コロナウイルス感染による死者の氏名や年齢と居住地、人物紹介を掲載した。
  「米国内の死者10万人近くに、計り知れない喪失」との見出しを付け、
  通常は写真などが載る1面すべてが活字だけで埋まる異例の紙面となった。
  死者紹介は1面を含めて計4ページにわたり、約1000人分を掲載した。


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  紙面では「誰一人として単なる数字で表せる存在ではなかった」などととして、
  人物紹介は「素晴らしい耳を持った指揮者」
  「ベーコンとハッシュドポテトが好きだった」などと一言で職業や生活を表現した。
  ニューヨーク・タイムズによると、
  死者の情報は全米各地の新聞の死亡記事などから収集し、
  実名を記すことで「失われた個々の人生を描写する」ことを目指したという。


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(デジタル版にこのプロジェクトで連携した全米各地の新聞社を掲載、各社サイトに飛べる。
 死亡記事を再活用することで個人情報漏洩リスクを防ぐ配慮・対応が秀逸)



デジタル版では全米100,000人の犠牲者を時系列で図解している。
こうしたプロジェクトを淡々と実現し、人々にメッセージを送る行動力を見ると
アメリカ新聞メディアの矜持、構想実現力が伝わってくる。
調査報道の伝統、技術を活かしたプロフェッショナルたちの仕事だ。