いくつものゆびきりをしてゆくように(小林真希子)

クリッピングから
讀賣新聞2020年6月22日朝刊
読売歌壇(俵万智選)


今週は最優秀作の筆頭に選ばれた一首に惹かれました。
万智さんは評に5行を費やしています。


  いくつものゆびきりをしてゆくように
  支柱にからむ朝顔の蔓

         平塚市 小林真希子

     【評】くるんと絡みつく蔓(つる)を、
        ただの指ではなく指きりの指としたところが素敵だ。
        何のための指きり? 
        それはもちろん、夏に咲くという約束である。
        多用した平仮名の優しいカーブが、蔓を思わせるところも工夫だ。


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優秀作の中ではこの歌が好きです。


  算数を数学と呼ぶ子の声が
  一オクターブ下がるはつ夏

       船橋市 矢島佳奈


中学に進学した息子の科目名の変化と
声変わりに着目した母の視点が新鮮でした。
最後の「はつ夏」も効果を上げているように思います。
コロナ禍の休校・分散登校等で苦労する子ども、親たちに
夏の日差しが差し込むような気持ちがしました。


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