今は危機なんだ、と揺さぶりたい気分だ(多和田葉子)

クリッピングから
朝日新聞2020年9月2日朝刊
朝日地球会議2020(10月11〜15日)予告(主な登壇者とプログラム)



朝日新聞が毎年秋に実施している「朝日地球会議」。
今年は新型コロナウイルスの影響ですべてオンラインでの開催になった。


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この会議の趣旨や、アクセスの容易さを考えると
オンラインでの開催はとても理にかなったことに思えた。
これまで二度、事前に申し込んで
会場となったホテルまで出掛けて聴講した。
それが自宅からすべてのセッションをパソコンで見られるのだから、
僕はこの方がよっぽどいいな。
コロナ禍をきっかけに
むしろオンライン開催を定番にしてはどうだろう。


僕が今年一番注目しているのが
作家・多和田葉子さんのセッション(10/12 16:00〜)。
パネリストに中村桂子さん(JT生命誌研究館名誉館長)。
コーディネーターは吉村千彰さん(朝日新聞本社大阪生活文化部長)


星に仄めかされて

星に仄めかされて

(多和田さんの最新作)


多和田さんへのインタビュー、
「騒がず耐える日本人 揺さぶりたい」から引用する。


  ドイツに住んで38年になるが、
  今回のコロナ危機で、無口で自分の中にこもりがちになり、
  自分の反応が日本人っぽいかもしれないと思った。
  討論欲が強まるドイツ人たちの中にいて、
  バスケットボールの試合の最中に、一人だけ茶道をしているように感じた。
  (略)


  日本は本当に不思議な国だと思う。
  政府がだめでも、国民自身がこのままではだめだと自覚して対策を取っている。
  法律よりも「人の目」という見張りがあり、
  危険だけど機能する面もあるだろう。


  感染症などの危機に面したとき、
  人の力で解決して乗り越えようというのが欧州の態度。
  日本人は騒がず耐えるところがある。
  今回もそれでやり過ごせると思っている人がいるかもしれないが、
  世界の状況を見なくなるようではよくない。
  今は危機なんだ、と揺さぶりたい気分だ。


  心配なのは、収束の予測がつかない状態で、
  日常生活が変化し、人間が変容してしまうのではないかということ。
  他人とじかに交わらないことでどうなるのか。
  新しい方策を考えないといけないのではないか。
  これまで私は、母語の消失など危機に直面した人々を描いてきた。
  危機を感じさせる言葉で、大きな風景を見せたいと思う。

                    (聞き手・吉村千彰)


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朝日地球会議は事前登録しておけば無料ですべてのセッションを視聴し、
質問等メッセージを送ることもできる。
興味のある方は下線部クリックで公式サイトからお申し込みください。
10月10日締め切り。
多和田さん以外にもマルクス・ガブリエル、ブレイディみかこなど
注目のスピーカーが多数登壇予定。