原田ひ香『一橋桐子(76)の犯罪日記』(徳間書店、2020/徳間文庫、2022)

『三千円の使いかた』に続いて連読。
原田ひ香『一橋桐子(76)の犯罪日記』(徳間書店、2020)を読む。
現代的なテーマを肩ひじ張らずに取り上げる文体がいいなと思う。
著者がNHK創作ラジオドラマ大賞出身であることが分かる気がするな。
「上から目線」でなく、ラジオ的な「横から目線」を感じる。
(平成17年[第34回]「リトルプリンセス2号」で最優秀賞。
 同賞は翌18年[第35回]大賞に湊かなえ作品「答えは、昼間の月」を選んでいる)



「著者からのコメント」を引用する。


  テレビや雑誌で、
  凄惨な事件や驚愕の出来事などを見るのが苦手です。
  しばらく、そのことばかり考えて
  何も手につかなくなったり、眠れなくなったりします。


  そんな時は事件の当事者の、
  いったいどこに分岐点があったのか、
  どこでどうすれば事件に巻き込まれなかったのか
  答えが出るまで考えてしまいます。


  残念ながら、
  答えが見つからないこともしばしばです。
  桐子さんは小さな幸せから放り出されました。
  彼女が事件に巻き込まれないように
  一緒に考えてはくださいませんでしょうか。
  共に、はらはらしてくださったら幸いです。


【担当からのコメント】を引用する。


  私も桐子さんと同じ、
  「人に迷惑をかけないで生きていきたい」
  と思っていました。


  でもこの本を読んで、
  「迷惑をかけて生きていてもいいのかもしれない」
  と考えが変わりました。


  人に迷惑をかけてこそ、生きている証なのだと!
  人とのつながりが疎遠になっている今この時代だからこそ、
  読んでもらいたい作品です!


●●●

    人に迷惑かけない老後を
    送るためには、どう生きればいい?
    老親の面倒を見てきてた桐子は、
    気づけばたったひとり、76歳になっていた。


    両親をおくり、
    わずかな年金と清掃のパートで細々と暮らしているが、貯金はない。
    同居していた親友のトモは病気で先に逝ってしまった。
    唯一の家族であり親友だったのに……。
    このままだと孤独死して人に迷惑をかけてしまう。


    絶望を抱えながら過ごしていたある日、
    テレビで驚きの映像が目に入る。
    収容された高齢受刑者が、刑務所で介護されている姿を。
    これだ! 光明を見出した桐子は、
    「長く刑務所に入っていられる犯罪」を模索し始める。


本書の目次は以下の通り。

  第一章 万引
  第二章 偽札
  第三章 闇金
  第四章 詐欺
  第五章 誘拐
  最終章 殺人
  解説 永江朗(文庫版)



(「答えは、昼間の月」所載)


[追記]  2022.10.10

10月8日からNHK総合で連読ドラマになり放映開始しましたね。
毎週土曜22時から22時50分(再放送あり)です。
桐子は松坂慶子さんが演じます。
さっそく録画予約しました!