下北沢駅前の新しい橋

山内ケンジ作・演出「新しい橋(le pont neuf)」を
下北沢駅前劇場に観に出かけた。
山内さんの芝居を観るのは
前回の三鷹に続いて二度目だ。
自殺の名所の崖っぷちで出会う
三人の男女のシーンに始まる。
六人の登場人物はそれぞれに、
不倫、背信など関係の病のかかっている。
本来なら救いようのない話だが、
台詞と間の使い方、予想を裏切る展開など
山内さんのホンがよく書けている。
同居人が主演である深浦加奈子さんと
二度ほど仕事をしたのが縁で僕も観ることにした。
芝居がはねて深浦さんや友人たちと食事をした。
夫に隠れて風俗の仕事をする妻を深浦さんが演じたが、
山内さんは足の組み方やカタチにまで細かく注文をつける。
自分の中で理想のイメージができているに違いない。
演出家がどんな細部にこだわるか知ることができると
舞台は二度楽しめる。
20代30代の頃は小演劇のメッカである下北沢に
ずいぶん通った。年間100本以上観ていた時期もある。
なにごともそうだと思うが、
あるジャンルで目を肥やすには
評判の高い傑作だけを選り抜いて観ていてはダメだ。
駄作も傑作も関係なく量を観て
自分の物差しを作っていかないと目は肥えない。
しかし、そのためには膨大な時間と根気が要る。
それは10代20代の特権である。
今夜は久しぶりにやってきたが、
飲食店の顔ぶれがすっかり変わっている。
20代の若者たちをこの街が引きつけているのは
変わりがないようだ。
「新しい橋」は2月11日まで。
お問い合わせは下北沢駅前劇場
もしくは城山羊の会03-5452-0465まで。