自分が咲く場所は自分で探す(片岡桃代さんの娘)

クリッピングから
朝日新聞2019年9月20日朝刊
読者投稿欄「ひととき」
咲く場所 決めた娘
兵庫県西宮市 片岡桃代 カウンセラー 50歳


  (略)
  思えば娘の就活は、私にとっても試練と葛藤の連続だった。
  他人を押しのけてまで自分を通すことはしない、
  ちょっと不器用な娘が厳しい就職戦線を勝ち抜けるのか、
  正直不安でしかなかった。


  母親として接するか、
  仕事であるキャリアカウンセラーとして接するかの
  線引きも難しかった。


  しかし、面接のため帰省した娘と
  テレビで紹介された言葉を巡って交わした会話にハッとさせられた。
  私が「置かれた場所で咲きなさいって、ええ言葉やね」と言うと、
  娘は毅然(きぜん)として言い切った。
  「私は自分が咲く場所は自分で探す」と。


  その言葉通り、働きたいと思う会社を選んだ娘。
  どんな花を咲かせてくれるのか、静かに見守ろう。
  (略)


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「置かれた場所で咲きなさい」
僕もなかなかいい言葉だなぁ、と思っていたけれど、
「私は自分が咲く場所は自分で探す」
お母さまに言い切って自身で就職先を決めてきたお嬢さん、素敵ですね。
キャリアカウンセラーで、やや心配性の母親への
反発、意地があったのかも、と片岡さんの投稿を読んで思いました。


働くことは大小の困難に立ち向かう連続です。
今の初心が日々の仕事に取り組むことで
しっかり根づきますように。


置かれた場所で咲きなさい (幻冬舎文庫)

置かれた場所で咲きなさい (幻冬舎文庫)

交流・交易の日本海を抗争の海にしてはならない(小笠原直樹)

クリッピングから
朝日新聞2019年9月20日夕刊
現場へ! 「地上イージス」の波紋(第4回)
地元紙1面 異例の社長論文


  新型兵器イージス・アショアの配備計画に揺れる秋田県を歩き、
  地元紙・秋田魁(さきがけ)新報に勢いを感じた。
  防衛省のずさんな調査のスクープや
  東欧の配備先ルポなどが読まれ、議論を喚起。  
  一連の報道は今年度の新聞協会賞を受けた。


  後押しをしたのが異例の社長論文「兵器で未来は守れるか」だった。
  昨年7月16日付の朝刊1面に載り、現場の記者を驚かせた。
  当時の社長で記者出身の小笠原直樹相談役(68)を先月、
  秋田市の本社に訪ねた。
  「社長が言ったら現場はなにくそと反発するのがむしろ社風かな。
  自分もそうしてきた」と笑顔で取材に応じた。


  論文を書いたのは、秋田市への配備を
  「安倍一強の政治主導で押しきられる」という危機感からだった。
  「防衛計画の大綱にないアショアの話が急に浮上し、
  導入が一昨年末に閣議決定された。
  県民は、なぜ必要なの、秋田市なのという疑問を抱いていました」
  (略)


  経営は編集に介入すべきでないという原則は意識していた。
  「個人の思いを書かせてほしい、使えなければ没にしていいと伝えました。
  掲載面の話は特にしなかったが、1、2日してほぼそのまま1面に載った。
  驚きました」


  論文では国の安全保障は尊重すべきとしつつ、
  北朝鮮が対話へ動き出した時に
  「『脅威に備える』としてミサイル発射装置を据え付けることは
  正しい選択だろうか」とアショア反対を鮮明にした。


  批判もあった。
  「国の専権事項である防衛政策を一地方の新聞社が
  うんぬんするのはおかしいという声は承知しています。
  『県民を誘導しすぎじゃないか』と言ってくる政治家もいました。


  ただ、論文に地元の事情に深入りしたくだりはない。
  そこを聞くと「迷惑施設だから置くなというんではないんです」と言い、
  論文には書かなかった、記者の頃から抱いてきた思いを語った。


  「秋田は奈良時代渤海国(今の中国東北部)と交流し、
  江戸から明治にかけ北前船で栄えた。
  県も中国やロシアとの航路開設などいろんな施策に
  予算をつぎ込んできたんです。
  それを全部ぶちこわすように兵器を置くことが秋田のとる道なのか。
  交流・交易の日本海を抗争の海にしてはならない」


  6階応接室で取材の終わり際、
  小笠原さんは窓の方へ私を招いた。
  眼下の市街地のすぐ先に
  陸上自衛隊の新屋(あらや)演習場。そして海。
  「ここが配備の最適地とは、日本の国はどうなってるんだろう」


  社是の書「蹈正勿懼」のついたてが壁際にあった。
  正を踏んで恐るるなかれ。
  小笠原さん流に言えば
  「読者・県民の番犬であれ」という地元紙の使命だ。
  「社員はみんな、この教えを誇りにしていると思います」
                         =おわり

                  (編集委員・藤田直央)


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「読者・県民の番犬であれ」の使命感で
社長は個人の思いを書き、
現場はそのメッセージの1面掲載を決めた。
新聞人の気概を感じた。
勢いのある地方紙の現場を丹念に取材し記事にした
藤田編集委員の仕事に一読者として敬意を払う。


秋田魁新報
イージス・アショア配備問題を巡る「適地調査、データずさん」のスクープなど一連の報道
45年ぶり、3回目の新聞協会賞受賞。
おめでとうございます。

おでん種仕入れに吉祥寺

秋の気配が漂ってきたな、と同居人がおでん小宴を企画立案。
大王食堂仕入部は吉祥寺・つかだまで買い出しに出掛けます。
暮れとは違って並んでいる客は数人。
対応する店員はおじさん、やや若めの男性の2名のみ。
なんだかいつもと違ってスローテンポです。


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いやいや、これがつかだのいつものリズムなんですね。
暮れには臨戦態勢を取って精鋭のおばさん軍団をズラリ揃え、
居並ぶ客の大量注文を手際よくさばき、
行列に漂う殺気を消し去っているのでした。


本日の客人はご近所の副会長、Kさん。
鍋の残りは三連休中の我が家の賄いごはんに化けます。
興奮して買いすぎないように注意しなければなりません。
(買わなすぎ!と同居人から後で叱られました。買い出しは難しい…)


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(練り物の種類が豊富で迷います。庶民価格がうれしいです)


「つかだのおでん」と並んで
「つかだのうなぎ 浜名湖直送」と看板にはありますが、
うなぎの販売はとうの昔に止めてしまったそうです。
(肝串を狙っていたのです)


「きょうから銀杏の殻を剥くから銀杏巻はまだないよ」
とベテランのおじさん。
そうか、あの銀杏は剥いたものを仕入れるのではなく、
殻付きで仕入れて、自分のところで剥いて加工してたのか。


それとも、どこかの庭で大量に拾ってくるのか…
いや、それじゃ、商売として安定的に仕入れるのは無理だろうな…
いやいや、銀杏の木を持つ寺と契約してゴッソリ仕入れる手もあるか……
真実やいかに。

香山リカ『オジサンはなぜカン違いするのか』(廣済堂新書、2019)

「自分は違うだろう」と信じたくても、
読んでいくうちにドキッとするんだなぁ、これが。
香山リカ『オジサンはなぜカン違いするのか』(廣済堂新書、2019)を読む。



目次を引用する。
各章のタイトルに、カン違いオジサンの台詞がひとつずつ付いている。


  第1章 パワハラオジサン
  「叱ってもらえるだけありがたいと思え!」


  第2章 キレるオジサン
  「ホントのオレはもっとスゴいんだゾ」


  第3章 情弱オジサン
  「キレイだし動画だしスゴイなぁ」


  第4章 セクハラオジサン
  「彼女もまんざらでもなさそうだったし」


  第5章 文化系説教オジサン
  「オジサンが”手取り足取り”教えてあげよう」


  第6章 上昇志向オジサン
  「苦労したんだから多少の役得はネ」


  第7章 子ども部屋オジサン
  「母さん、ボクのご飯まだ?」


香山さんは男性を一方的に糾弾する姿勢は取らない。
「おわりに」から引用する。


  もちろん、私も自分が
  ”おとなでステキなオバサン”になれているとは思っていません。
  鎌田さん(引用者注:鎌田實。医師、作家)の言う
  アンガー・マネジメントもできないときがありますし、
  先ほども言ったように若いときからの趣味をダラダラと楽しんで
  それで満足している面もあります。

 
  ただ、「これでいいのだ」と開き直ることはせずに、
  「私にとって、”おとなになる”とは何か」と考え続け、
  「これかな」と思ったらそれをやってみよう、とは思っています。


  先ほどの中国語学習もそのひとつです。
  最近、病院には中国人の患者さんが来る機会が増え、
  その人たちは日本語がとても上手だとはいえ、
  ひとことでも中国語で話しかけることができたら
  安心してくれるのではないかな、と思ったのがそのきっかけです。
  (略)


  どうすれば、本当のおとなになれるのか。
  それを考え続けるのが、カン違いオジサンにならず、
  孤独を免れる唯一の道です。


  ”おとな道”には終わりがない。
  それはたいへんなことですが、
  いつか日本中に個性豊かなおとなのオジサンたちがあふれているかも、
  と想像すると、とても楽しみです。
  (略)
                      (pp.213-214)


香山さんは精神科医としての豊富な臨床体験を元に
オジサンたちにエールを送ってくれているんですね。
抽象的でなく具体的な指摘が随所にあって
軌道修正の参考になりますよ。


部長、その恋愛はセクハラです! (集英社新書)

部長、その恋愛はセクハラです! (集英社新書)

(香山さんも第4章で牟田さんの本から引用しています。連読でどうぞ!)

「特休」と皆が書く中「休」とだけ(群青更紗)

クリッピングから
讀賣新聞2019年9月16日朝刊
読売歌壇(俵万智選)


今週の優秀作3句の中では
最初の句が一番心に残った。


  蝉時雨、花火大会、甲子園、遠くの音を聴くだけの夏
  狭山市 えんどうけいこ


  【評】上の句、賑(にぎ)やかで華やかな夏の風物詩かと思いきや、
     明かされる三つの共通点に、はっとさせられる。
    「聴く」という漢字からは、耳を澄ませ、
     想像をしていることが伝わってくる。
     手ざわりの希薄な夏の寂しさ。


「手ざわりの希薄な夏の寂しさ」。
俵さんの評の言葉づかいの正確さに心を引かれる。


入選句にもいいものがあった。


  一歩前歩いていたら殺(や)られたと終戦の日に必ず話す
  東京都 網中節子


話しているのは父か、祖父か。
「殺(や)られた」の一語が読み手の心にグサリと刺さる。


  「特休」と皆が書く中「休」とだけ書きゆく今年も非正規の夏
  四日市市 群青 更紗


「休」とだけホワイトボードに書く非正規社員の心の動きに
「特休」と書く正社員たちはきっと気づかないのだろう。
悪気がない分、余計心に重たい。


  700の登録あれどたった今話せる友が思い浮かばず
  松戸市 菊池玲子


700と数字で句を始めたことで、
スマホ全盛の今のコミュニケーションが鮮やかに描き出された。
その奥に潜む孤独も。


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短歌という表現形式がこんなにも豊かに、深く
人の気持ちに寄り添えるものなのか、と掲載句を読んで思う。
(先日、初投稿しました! 掲載めざして他人の句も勉強しております)


考える短歌―作る手ほどき、読む技術 (新潮新書)

考える短歌―作る手ほどき、読む技術 (新潮新書)

短歌のレシピ (新潮新書)

短歌のレシピ (新潮新書)

(この二冊、短歌入門に最適です。俵先生、初心者に教えるのがうまい)

世界のシステム全史を描く着想

クリッピングから
朝日新聞2019年9月13日朝刊
世界システム論 壮大な試み
ウォーラーステインさんを悼む
川北稔・大阪大学名誉教授


  ウォーラーステイン
  その主著『近代世界システム』第1巻を上梓(じょうし)した1974年には、
  ベルリンの壁も、ソ連邦も厳然として存在していた。


  したがって、現代世界を、
  社会主義圏も含めて巨大なひとつのシステムとして考え、
  このシステムの全史を描きだそうとする彼の着想を理解する者は、
  世界的にも多くはなかった。


  しかし、以来、半世紀、
  いまや「グローバル化」は日常会話でも、
  陳腐な表現とさえなっている。
  「世界システム」論の透徹した論理性はいまでも衝撃的でさえある。
  (略)


  ウォーラーステインの影響は、
  社会学をはじめ、社会科学のあらゆる分野に及んでいるものの、
  歴史学の立場からいえば、大量の個別研究を踏まえた、
  壮大な近代史叙述を自ら試みた点に、その特徴がある。


  最後まで意欲を燃やしていた主著第5、6巻は完成しなかったが、
  膨大な数の他の著作とあわせて、
  彼の思い描いた第1次大戦以後の世界史像を想定することは、
  それほど困難ではない。
  (略)


  時事的な問題にも積極的に発言してきた彼は、
  東日本大震災にも重大な関心を寄せていた。
  20世紀転換期のアメリカの良心を象徴する人物のひとりであった。
                           (寄稿)


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ウォーラーステイン世界システム分析について
これまで学んだことはなかった。
さて、どの門から入ってみようかな?


入門・世界システム分析

入門・世界システム分析

知の教科書 ウォーラーステイン (講談社選書メチエ)

知の教科書 ウォーラーステイン (講談社選書メチエ)

資本主義に未来はあるか──歴史社会学からのアプローチ

資本主義に未来はあるか──歴史社会学からのアプローチ

wikipedia:en:Immanuel Wallerstein

うなぎ弁当と写真力

週末、祝日、年休、
インプットホリデー(毎月一回)をつなげて5日間の秋休み。
4日目は沿線の公営ケアハウスで暮らしている母に
久しぶりにうなぎ弁当を出前に行く。


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到来物の貴重な国産うなぎを使う。
我が家の惣菜、近所の八百屋のおばさんが作る惣菜を持って行く。
ケアハウスでは通常一日三食、食堂で提供される。
前日までに事務所に連絡を入れておけば「欠食」扱いとなり、
その分は毎月の請求金額から減額してくれる仕組みだ。


春に90歳になった母は惣菜には目もくれず、
うなぎとキュウリぬか漬けに意識集中。
「ああ、美味しかった。ありがとね」と堂々完食した。
うなぎを送って下さった方には
御礼かたがたハガキで事前に報告してある。
200%活用させていただいている。


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ケアハウスを後にし、東京ドームのある大江戸線春日駅に向かう。
園内のGallery AaMo(ギャラリー・アーモ)で開催している
「篠山紀信展・写真力」を見に行く。
僕はポップな写真力を持つ篠山さんの作品が大好きで、
3.11のとき被災地で撮影した作品集『ATOKATA』にも注目していた。


平日の昼だったせいか人も多くなく、じっくり見ることができた。
誰もが知っている有名人が多数登場するのが楽しい。
「写真は時代の映し鏡」という紀信さんの言葉が少しも誇張でないと思えた。


僕のベスト3は「大相撲」(1995)「筧美和子」(2014)「マリー・ヘルビン」(1972)。
(筧、マリーは今回の展示を見るまで知らなかった女性たち)
国技館の土俵を中心に勢揃いする相撲関係者たちは全員男性。
展示されていた「刺青の男たち」(1972)より目つきが鋭くて怖かった。
この作品がベスト1でした。


10月27日まで 10:00〜18:00(入場17:30まで)
(会期中無休)


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(入り口に掲示してある代表作「ジョンとヨーコ」のみ撮影OK)


追記(2019.9.21):


朝日新聞2019年9月20日朝刊
でっかい写真 ひきつける力
篠山紀信さん全国巡回個展 入場100万人


時代を象徴する「顔」を激写し続けてきた
写真家・篠山紀信さん(78)の個展「写真力」が7年かけて全国を巡回し、
18日には、33会場目となる現在の東京展で、
累計入場者数が100万人に達した。


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