『いっきに学び直す世界史』第2巻 西洋史/近世・近代
【現代世界の源流がわかる知識編】(東洋経済新報社、2025)を読む。
巻頭「本書を強く推薦する」(佐藤優)から引用する。
だから、本書は足かけ10年の準備を経て世に出されたことになる。
これだけ時間がかかった理由のひとつは、
原著がまさに要点だけを記したいわばレジュメのようなもので、
執筆陣に依頼してストーリーとして読めるように
書き直す必要があったことである。
(略)
そして第2の理由として、
原著が出てから半世紀の間の歴史学の成果を
盛り込む必要があったことがあげられる。
1970年代は、本書のように
世界史を通史として記述することが一般的だった。
さらに、マルクス主義の唯物史観の影響が強く、
歴史は「原始共同体ー奴隷制社会ー封建制社会ー資本主義社会」と、
生産力の増大によって段階的に発展していくという見方が主流だった。
しかし、1989年11月のベルリンの壁崩壊、
翌月のマルタ会談における米ソ首脳の東西冷戦終結宣言、
1991年12月のソ連崩壊が、歴史記述にも大きな影響を与えた。
マルクス主義を国是とした東欧諸国の社会主義からの離脱、
ソ連の崩壊によって、唯物史観は知的世界における影響力を失った。
このマルクス主義の知的権威の失墜と絡み合う現象であるが、
1980年代に入ってからは、ポストモダン(脱近代主義)思想が流行した。
歴史においても、「大きな物語」よりも
「小さな差異」を重視すべきであるという考え方が、
無視できない影響を持つようになった。
大学で歴史を専攻する学生の間でも、
「既存の知」のあり方を批判する「カルチュラル・スタディーズ」
(民衆的な文化を権力や伝統など社会制度との関係において
とらえようとする文化研究)や
「ポスト・コロニアリズム」
(植民地支配がのこしたものを批判的にみる理論・研究)が
人気を博するようになった。
その結果、通史は権力者の側からの歴史の見方であると
批判的に見られるようになった。
1990年代半ば以降に出された世界史の講座本を見ると、
通史の要素が薄れ、
各時代におけるジェンダーや被差別民の問題、
欧米以外の人々の文化に関する論考が多々含まれるようになっている。
しかし、このような通史軽視の傾向は、
外交官や商社員、ジャーナリストなど、
国際社会で仕事をする人々にとって極めて不便なのだ。
実際に世界の政治(軍事を含む)や経済を運営するパワー・エリートは、
権力者の視座に立って歴史を見ているからだ。
そこで、本書においては、両者のバランスをとるように配慮した。
すなわち、通史を重視し、権力者側からの歴史観を示した上で、
そのような歴史観では抜け落ちてしまう
民衆の動静についてもていねいに記述するようにした。
そのような方針で執筆された本書は、
ビジネスパーソンにとって役に立つ。
たとえば、海外を相手にする仕事で突然、
自分がまったく知らない地域を担当することがある。
そういうときに本書を一度読んでいると、
「たしか、あのあたりに書いてあったな」という記憶が甦ってくる。
(略)
だからこそ、学ぶにあたっては、
個別の語句の意味を断片的に覚えるのではなく、
それらが歴史の流れの中でどのような意味を持つのか、
通史を丁寧に追うことによって理解を深めていく学び方をしてほしい。
(略)
*ゴシック表記は原文のまま
原著者:大久間慶四郎
企画・監修・解説者:佐藤優
編集者:山岸良二
執筆者:平山顕/馬場晴美
対話構成:小泉明奈
装丁:井上新八
編集協力:鈴木充/BE-million
編集アシスト:豊田一穂/馬場晴美
編集担当:中里有吾