イッセー尾形の奥の細道

北千住にイッセー尾形さんの芝居を観に行った。
文学シリーズ第三弾で、今回は松尾芭蕉
これまで夏目漱石太宰治を取り上げている。
北千住は芭蕉奥の細道の旅に出立した土地で、
マルイのシアター1010を舞台に選んだ。
7本連作でそれぞれ芭蕉にちなんだ設定、台詞を使う。
圧巻だったのが場末の老ホステス(70代か)が
ウクレレでジャズボーカル風に歌う唄。
芭蕉奥の細道」の句を歌詞にして歌いつないでいく。
知っているはずの句がまったく違う印象に変貌していく。
僕はイッセーさんが毎回の公演で発表する歌ものを
楽しみにしている。
今回はゲストにスイス演劇学校の4人の男女が
加わったのが新しい試み。
旅の僧の扮装でそれぞれの作品に登場し、
芭蕉の句を一句詠む。
ひとり芝居の張りつめた時空間がゆるむので
僕にはまだ実験の領域としか思えなかったが、
イッセーさんの肩の力を抜いた自然体に救われた。
イッセーさんは演出家の森田雄三さんとともに
素人を集めたワークショップをもう数年続けている。
ベルリンなどヨーロッパの都市での公演も続けている。
活動を見ていれば世界最先端の芸術だと思うが、
イッセーさんにそんな力みはない。
表現に対する真摯でどん欲な挑戦の姿勢を
僕は高く評価したい。