10時間の知的マラソン

卒業論文(Thesis)プレゼンテーションが終わった。
朝9時から夜の19時まで、
昼休みもなくぶっ通しで
12人が次々と自分の選んだテーマについて発表した。
みんなコーヒー、ビスケット、果物、
チョコレートなどでしのぎながら
一日分の知的マラソンを完走した。
僕は「粋」についてプレゼンテーション。
幸いにして好評を得たが、
そもそも九鬼周三先生は「粋」の美意識を
日本民族以外の領域に拡張することにはしごく否定的だった。
その点では、いかにも野暮なことをしてしまったかもしれない。
けれど、日本の広告表現から「粋」が失われて久しく、
僕としてはなんとしても
「粋」の喪失を回復する一助になればとの一心で
ここまでテーマを掘り下げてきたのだ。
10時間のプレゼンテーションが続いて
僕たちも、学長・教授たちもクタクタだった。
発表を終えて僕は以前見つけたイタリアレストランに
憩いを求めてやってきた。
この店のミネストローネはなんとも家庭的で
まるでイタリアのお母さんが作ったような素朴な味だった。
これで終わったかなと安心していたら
コンラッド学長に新たなミッションを提示された。
断るのも粋でなく、明日も帰国後も、
僕のベルリンスクールのミッションは続くのだった。