机の前に座り続ける能力

作家が作家でいられるためにはどうするか。
もちろん動機や資質や幸運などが必要には違いない。
宇野千代村上春樹など複数の作家が言っているのは
一日何時間か白い原稿用紙を前にする能力である
(人によってはワードプロセッサーかもしれない)。
書けようが書けまいが原稿用紙を前に毎日座り続ける。
その継続がなければ作家にはなれない。
ベルリンスクールの卒業論文では
初めて英文で80ページ書くことになった。
僕にしてみれば一大事である。
結局〆切前の一ヶ月半くらいは
毎日MacBookの前にとりあえず座ることになった。
不義理であるのは承知だが夜の付き合いはほとんどできない。
家に帰ってもぐずぐずテレビを見たり、
ネットサーフィンしている訳にもいかない。
ベルリンに行って他の級友に尋ねてみても
クリスマス休暇がなくなったり、
休日の朝の日課である煙草とエスプレッソと新聞の
ひとときもあきらめた。
みな、机の前に座り続けるためである。
そうして12人が60-80ページの論文を物にしていった。
文章を書くためにまずは物理的に自分の肉体をしばること。
プロフェッショナルが口を揃えるのだから
間違いはあるまい。
写真はベルリンスクール卒業祝いにもらったペリカン
ドイツの大学の伝統である。
"BERLIN SCHOOL PIONEER CLASS"と金文字を入れてくれた。
相性がいいだろうから
同じペリカンのインクを買ってきて使いはじめた。
万年筆は使っているうちになじんできて
手と一体化していく感覚がなんとも言えない。
机の前に座り続けるためには
自分の気に入った道具が要る。
MacBook、万年筆、辞書などである。
ときどき脱走したくなる自分を
甘やかしてくれる机の友なのだ。
さて、万年筆と言えば僕が楽しみにしているブログ
「万年筆で書く」をご紹介したい。
雷屋さんが書き続けている。
万年筆で書いたご本人の文字と、
雷屋さんの生活全般についての観察力が楽しい。
時間が許したら、そちらも遊びに行ってみてください。
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