会田雄次「アーロン収容所」(中公新書)を読む。
高校の教科書で抜粋を読んだ記憶がある。
通読したのは初めてだ。
阿川弘之が「月刊文藝春秋」
2008年3月号所載「葭の随から」で
あらためて紹介している(「英国の光と影」)。
アーロン収容所―西欧ヒューマニズムの限界 (中公新書 (3))
- 作者: 会田雄次
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 1962/11/01
- メディア: 新書
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「西欧ヒューマニズムの限界」とある。
会田の所属した部隊がビルマで終戦を迎え捕虜となる。
収容所での生活、そこから生まれた考察を記した本である。
イギリス人の現実的で狡猾な統治の実態が
こと細かに書かれている。
日本人の弱点や恥も同様に書いてあるから
一方的な視点とは言えまい。
会田は捕虜生活の間、
自分がひ弱なインテリであることを恥じていた。
泥棒名人や大工の達人や舞台俳優が
捕虜生活では幅を効かせていたのだ。
けれど、この著書が書かれなければ
こうした事実があったことは
歴史の濁流に消えていたに違いない。
会田の記憶、視点、考察、筆力、
そしてなによりこの著書を世間に問うた勇気が
「アーロン収容所」を現代に浮かび上がらせた。
まえがきにはこうある。
「やっぱり、とうとう書いてしまったのか。
まえがきを書こうとすると、
どうしてもこのような感慨が
まず最初に浮かんでくる。」
1962年初版、2005年に87版を刷った
ロングセラーである。
(文中敬称略)