竜馬の竹輪磯辺揚げ

仕事の大波が過ぎて、
まだまだ小波は残るものの
次の大波まで少し間がある。
こんなときはベルリンスクールで学んだ即興力を使い、
即座に決断する。
週末をはさんで5日間、
第1回プチ夏休みを取ることに決めた。


休む前に細々とした仕事をいっさいがっさい片付けて、
さて、新橋の小宇宙へ、おのれを祝福するために飛び込む。
西新橋を離れて数ブロック歩くと、別の宇宙がある。
しけた入り口の立ち飲み屋「竜馬」にふらり入ると
いるわ、いるわ、週末を祝福する人たちが。
ウナギの寝床のようにカウンターが延び、
焼酎の酒瓶が壁いったいにレイアウトされていて壮観だ。
20-30人くらいは入っている。


手始めにグラスの黒生ビールを兄ちゃんに注文する。
カウンタ−の小カゴにお金を入れておくと
注文するたびに兄ちゃん、姉ちゃん、おっさんが、
代金を持っていく。
帰るときに小カゴのお釣りを忘れず財布にしまって帰ればいい。
ロンドンのパブや、スペインのバルも楽しいが、
新橋の立ち飲み屋も負けていないな。
まして、「竜馬」だもの。
青雲の志を抱いて飲むにはぴったりだ。
写真の竹輪磯辺揚げマヨネーズ添えが300円。
21時を過ぎるとサッポロ一番(塩、味噌)なんていうメニューもできる。
こちらは、280円。楽しいな。


異国の、気の置けぬ客人が今度僕を訪ねてきたとき、
こうした立ち飲み屋に連れてきてやろう。
彼らは高価な懐石料理などたいして喜んでいないのだ。
自分ひとりでは来られないこうした庶民の店や
カツ丼をガツガツ食わせる店を案外喜ぶ。
おまけに安いからご馳走するこちら側にも都合がいい。
一石二鳥だね。


誰が注目するわけでも無論ないが、
「竜馬」の夜で、僕のプチ夏休みは幕を明けた。
飲んで、食べて、飲んで、食べて、
となりの客の会話を聴くともなく聞いて、
さらに飲んで、食べて。
小カゴに10,000円入れておいたら、
帰るときに7,000円残っていた。
初めてだから気が回らなかったが、
幾分でも心付けを置いてきてやればよかったな。
次からそうしよう。
従業員はみんな汗だくで働き、
僕たちの日々の疲れを癒す手助けをしてくれていた。