ポスト・イット・フラッグのおもてなし



本を読んでいるときに
自分が気になった場所をどうチェックしていますか?
齋藤孝先生の薫陶を受けていれば三色ボールペンだろうし、
ブックオフに売るのをあきらめれば端を少し折ってみてもよい。
久しぶりにポスト・イットを使ってみるかと文具店をのぞくと
改良された新製品が並んでいる。


僕が気に入ったのは「ポスト・イット・フラッグ透明見出し683MH」。
10ミリx 43.6ミリ。各20枚ずつ6色で計120枚。
357円(消費税込み)。1枚3円弱だから、決して安くはない。
フィルム素材だからポスト・イットした本を
カバンに入れて持ち運んでもやぶれないし、
透明だから貼っても下の文字が透けて見えて具合がいい。
ボールペンなどで上からメモを書くこともできる。
おまけにポップアップ式で次から次へと取り出せるから、
本の内容が佳境に入ってきたときも
マシンガンのようにポスト・イットできて気をそがれることもない。
これは使ってみて実に快適だった。
神は細部に宿りたまう。


100円ショップに行けば
ポスト・イットもどきがずらり並んでいるが、
この新製品はまだコピーされていなかった。
この使い勝手はiPhone
iPodMacintoshを使うときの心地よさにどこか似ている。


もうイノベーションもないだろうと思っていた製品に
「おもてなし」を実現した革新があることを発見して
僕はうれしくなった。
一見地味なイノベーションだから
実際に使ってみた人以外は最初はなかなか気づかないだろう。
僕も店頭での試用では使い心地の違いまでは分からなかった。


しかし、いったんこの心地よさを知ってしまうと
なかなか逆戻りしづらい。
中島聡が「おもてなしの経営学」で指摘している主題、
ユーザー・エクスペリエンス、すなわち「おもてなし」がここにもある。
視点を新しくしてまわりを眺めると発見があるものだ。
この新製品に、中国やベトナムで生産する100円ショップの製品が
いつ追いつくのか、それとも追いつけないのか。
経済のテーマとしても興味深い。