児玉清『寝ても覚めても本の虫』(2001/2006文庫版)


本の虫とはこういう人を言うんだろうなぁと思う。
児玉清寝ても覚めても本の虫』を読む。


寝ても覚めても本の虫 (新潮文庫)

寝ても覚めても本の虫 (新潮文庫)


僕はミステリー小説をさほど読まないので
児玉が耽溺している本の世界とはあまり縁がない。
けれど、本の虫・児玉があふれんばかりの愛で紹介する本には
魔力がのりうつり思わず手にしたくなる。



映画評論家・淀川長治
児玉の「土曜映画劇場」解説を撮り直すよう命ずる一節が印象的だ。
淀川は自分が出演していた「日曜映画劇場」と並行し、
児玉の番組も監修していたのだ。


  解説者がひどい映画と言ってしまってはいけない。
  それは見る人に対して失礼なことであり、
  作った人にも失礼だ。
  必ず褒めなさい。
  よいところがどこかに必ずあるはずだから、
  必ずそこを褒めて視聴者に勧めなさい。
  だから撮り直しなさい。
                       (pp.152-153)


児玉は取り上げる新刊すべてを英語原書で読む人だ。
本人は謙遜するが本業以外にもうひとつの世界を持つ人を
僕は尊敬したい。



どの世界にも目利きはいるもので
1992年から児玉はNHKBSII「週刊ブックレビュー」の司会を
引き受けることになる。
純粋な趣味だった領域が仕事に変わる。
児玉個人にとって
公私の境目をめぐるひとつの決断であった。


(文中敬称略)