本の虫とはこういう人を言うんだろうなぁと思う。
児玉清『寝ても覚めても本の虫』を読む。
- 作者: 児玉清
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2007/02/01
- メディア: 文庫
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僕はミステリー小説をさほど読まないので
児玉が耽溺している本の世界とはあまり縁がない。
けれど、本の虫・児玉があふれんばかりの愛で紹介する本には
魔力がのりうつり思わず手にしたくなる。
映画評論家・淀川長治が
児玉の「土曜映画劇場」解説を撮り直すよう命ずる一節が印象的だ。
淀川は自分が出演していた「日曜映画劇場」と並行し、
児玉の番組も監修していたのだ。
解説者がひどい映画と言ってしまってはいけない。
それは見る人に対して失礼なことであり、
作った人にも失礼だ。
必ず褒めなさい。
よいところがどこかに必ずあるはずだから、
必ずそこを褒めて視聴者に勧めなさい。
だから撮り直しなさい。
(pp.152-153)
児玉は取り上げる新刊すべてを英語原書で読む人だ。
本人は謙遜するが本業以外にもうひとつの世界を持つ人を
僕は尊敬したい。
どの世界にも目利きはいるもので
1992年から児玉はNHKBSII「週刊ブックレビュー」の司会を
引き受けることになる。
純粋な趣味だった領域が仕事に変わる。
児玉個人にとって
公私の境目をめぐるひとつの決断であった。
(文中敬称略)