岡田英弘著作集第1巻『歴史とは何か』を読む。
2013年6月発刊。年4回刊行で二年かけて全8巻を世に送る。
待ちに待った著作集である。
1月に83歳になった岡田の存命中に
この企画が実現したことを読者のひとりとして悦ぶ。
岡田を支える四人の編集チーム
(能澤壽彦、嶋津弘章、宮脇淳子、山粼優子)が進めている。
- 作者: 岡田英弘
- 出版社/メーカー: 藤原書店
- 発売日: 2013/06/23
- メディア: 単行本
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新書版とは文章が重ならないように、
単行本未収録の原稿、すでに入手困難になった書籍に収録されたもの、
討論会における発言記録、等々を中心に構成した(後略)
(「はじめに」p.2より引用)
岡田の書いた文庫、新書を愛読してきた読者にも
重複が最小限で済むよう十分配慮して編集している。
新井俊三が主宰していた役員朝食勉強会の内容をまとめた
「エグゼクティブ・アカデミー・シリーズ」の原稿が面白い。
この勉強会に自分も出席して岡田の講義を聴き、
自分で疑問、意見を醸成していく雰囲気が味わえる。
- 作者: 谷沢永一
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2005/12
- メディア: 単行本
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世に慧眼の士はいるもので、
谷沢永一が『紙つぶて 自作自注最終版』(2005)に書いている。
要するに前払いしても欲しいと、
読者がしがみつくほどの興味ある本を出せばよいのである。
たとえば、『岡田英弘著作集』などは
ちょうど今が旬ではないかと思う。
(p.237より引用)
文脈を紹介しておくと、
売れ行きは多く見込めなくとも、趣味が深く品のよい読者を想定し、
適度の前金を取る出版方法を谷沢は提案している。
かつて円本の予約を募ったとき、
最終巻に当てる為と称して、まず一人一円を納めてもらった。
それが良心的出版社の豊かな資金になった。
上記引用は、1971年7月10日執筆「奇妙な予約出版」に
谷沢が付けた自作自注の一部である。
「紙つぶて」自作自注は1985年頃から2004年頃まで書き続けた。
谷沢が「ちょうど今が旬」と書いたときから
少なくとも10年、ひょっとしたら30年が経過した。
読者からの前金による支援に頼らず
藤原書店が自力で企画を実現した。
藤原良雄社長の英断に、
一読者として身銭を切って拍手を送る。
同著作集は現在第2巻『世界史とは何か』、
第3巻『日本とは何か』まで刊行されている。
(文中敬称略)