迫川尚子ベルク副店長は「味の形」が見えると言う。
同店顧客でもある柄谷行人はその力を「構造記憶」と名付けた。
「共感覚」と似ているようで似ていないその境界線をめぐって
(よ)が迫川に二度にわたってインタビューする。
迫川尚子/(よ)『味の形』(ferment books、2015)を読む。
味の形 迫川尚子インタビュー (ferment vol.01)
- 作者: 迫川尚子,(よ)
- 出版社/メーカー: ferment books
- 発売日: 2015/12/05
- メディア: 単行本
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メモ帳に「形」を描きはじめながら
迫川はマクドナルドの「形」を語る。
迫 ま、こんなような感じで、
すごくいろんな色が入っているんですよ。
ビビットカラー(ママ)が。
よ ビビットカラー。
いかにも工業製品っぽいですよね。
迫 でも、すごくきれいです。
この丸も、きれいなんですよね。
定規とコンパスで描いたほうがいいような感じで。
色は赤と青と黄色と、原色が入ってきますね、紫とか。
(中略)
よ どうやって商品開発しているのか
知りたいですよね。
迫 そうですね。
でも、例えばね、ピンクとかは、
あんまりきれいじゃないんですよね。
(p.141)
迫川はファストフード、ジャンクフード、
化学調味料などに偏見がない。
ポテトチップスなどはコンビニの全種類を試すと言う。
ふたりの対話は食品における「ゆらぎ」の領域に入り込んでいく。
迫 ゆらぎがあるってことは、
隙間があるってことだから、
そこに何かが入ってきちゃいますもんね。
風も吹くけど、悪いものも入るかもしれないし。
よ 風が吹く感じは、ゆらぎと一緒で、
良いイメージだとおっしゃってましたね。
迫 そう。だから管理するためには
ゆらぎがないほうがいいんでしょうね。
(中略)
迫 保存料とか、着色料とか、
それがもう接着剤になっちゃってるんですよ。
よ なるほどね。
迫 それで、全部くっついちゃってて、
ほんとに隙間がなくなっちゃうんだ。
だから、ああそうか、
いまちょっとわかったのが、
化学調味料って、やっぱり隙間を消すものなんですね。
(pp.142-143)
迫川は新宿ベルクで商品開発と人事を担当している。
ベルクの食べ物、飲み物には「ゆらぎ」があって
だから舌も身体もホッとするのかな。
本書を読んでそう思った。
発行元編集人(よ)が
インタビュアーとしていい仕事をした。
ferment=発酵にこだわる社名が
本書の内容とシンクロして面白い。
(よ)はブログ「美味しい世界旅行」を執筆中。
「食の職」新宿ベルク: 安くて本格的な味の秘密 (ちくま文庫)
- 作者: 迫川尚子
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2015/04/08
- メディア: 文庫
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