迫川尚子/(よ)『味の形』(2015)


迫川尚子ベルク副店長は「味の形」が見えると言う。
同店顧客でもある柄谷行人はその力を「構造記憶」と名付けた。
共感覚」と似ているようで似ていないその境界線をめぐって
(よ)が迫川に二度にわたってインタビューする。
迫川尚子/(よ)『味の形』(ferment books、2015)を読む。


味の形 迫川尚子インタビュー (ferment vol.01)

味の形 迫川尚子インタビュー (ferment vol.01)


メモ帳に「形」を描きはじめながら
迫川はマクドナルドの「形」を語る。


   迫 ま、こんなような感じで、
     すごくいろんな色が入っているんですよ。
     ビビットカラー(ママ)が。


   よ ビビットカラー。
     いかにも工業製品っぽいですよね。


   迫 でも、すごくきれいです。
     この丸も、きれいなんですよね。
     定規とコンパスで描いたほうがいいような感じで。
     色は赤と青と黄色と、原色が入ってきますね、紫とか。
     (中略)


   よ どうやって商品開発しているのか
     知りたいですよね。


   迫 そうですね。
     でも、例えばね、ピンクとかは、
     あんまりきれいじゃないんですよね。
     (p.141)



迫川はファストフード、ジャンクフード、
化学調味料などに偏見がない。
ポテトチップスなどはコンビニの全種類を試すと言う。
ふたりの対話は食品における「ゆらぎ」の領域に入り込んでいく。


   迫 ゆらぎがあるってことは、
     隙間があるってことだから、
     そこに何かが入ってきちゃいますもんね。
     風も吹くけど、悪いものも入るかもしれないし。


   よ 風が吹く感じは、ゆらぎと一緒で、
     良いイメージだとおっしゃってましたね。


   迫 そう。だから管理するためには
     ゆらぎがないほうがいいんでしょうね。
     (中略)


   迫 保存料とか、着色料とか、
     それがもう接着剤になっちゃってるんですよ。


   よ なるほどね。


   迫 それで、全部くっついちゃってて、
     ほんとに隙間がなくなっちゃうんだ。
     だから、ああそうか、
     いまちょっとわかったのが、
     化学調味料って、やっぱり隙間を消すものなんですね。
     (pp.142-143)



迫川は新宿ベルクで商品開発と人事を担当している。
ベルクの食べ物、飲み物には「ゆらぎ」があって
だから舌も身体もホッとするのかな。
本書を読んでそう思った。


発行元編集人(よ)が
インタビュアーとしていい仕事をした。
ferment=発酵にこだわる社名が
本書の内容とシンクロして面白い。
(よ)はブログ「美味しい世界旅行」を執筆中。


(文中敬称略)