大学教養課程のときに参考書を購入し、
独特の文章にいたく感激しながらも、
始めの方で挫折したことを思い出した。
いまその本は手元には残っていない。
関口存男(つぎお)のドイツ語学習参考書だ。
池内紀『ことばの哲学—関口存男のこと』(2010)を読む。
- 作者: 池内紀
- 出版社/メーカー: 青土社
- 発売日: 2010/10/21
- メディア: 単行本
- 購入: 2人 クリック: 37回
- この商品を含むブログ (18件) を見る
関口は語学の天才と呼ばれることを嫌い、
生涯文例を集め、「意味形態」に挑んだ。
池内はヴィトゲンシュタイン『論理哲学論考』と
関口の業績を本文12章で比較対照する。
その視点と考察は独自のものだ。
ほぼ同時代に生き、言語の不可思議の解析に生涯を捧げ、
神に召された二人の仕事を現代に蘇らせた。
- 作者: 荒木茂雄,真鍋良一,藤田栄
- 出版社/メーカー: 三修社
- 発売日: 2006/09/15
- メディア: オンデマンド
- クリック: 30回
- この商品を含むブログ (1件) を見る
- 作者: 大村喜吉
- 出版社/メーカー: 吾妻書房
- 発売日: 1960
- メディア: ?
- この商品を含むブログを見る
関口の仕事を英語における齋藤秀三郎の仕事と比べる
中村捷(『実用英文典』訳述)、アマゾンレビュアーhiro2356の文章を読んだ。
人類はこうしたThink Differentする人間が
限界点を押し広げることで知的進歩を遂げると僕は考える。
天才と安易に呼んで知らん顔するのでなく、
そうした先達が存在することを有難く、誇りに思う方がずっといい。
冠詞〈第1巻〉定冠詞篇―意味形態的背景より見たるドイツ語冠詞の研究 (1960年)
- 作者: 関口存男
- 出版社/メーカー: 三修社
- 発売日: 1960
- メディア: ?
- この商品を含むブログ (1件) を見る
- 作者: 齋藤秀三郎,中村捷
- 出版社/メーカー: 開拓社
- 発売日: 2015/06/08
- メディア: 単行本
- この商品を含むブログ (10件) を見る
伝統的アカデミアに属する教授、長老たちが、
関口のような突破者を理解できないのも無理はない。
素人が口を出して申し訳ないが、
しょせん頭の出来も情熱量も
「凡人」の先生方とは比較にならないのだ。
努力と政治では人はモーツァルトにはなれない。
感情に流されるのことのない筆調で
関口の仕事の本質に迫った池内は、
凡庸なアカデミアに対して知的に異議申し立てをした。
本書が長く次の世代に読み継がれることを望む。
初出「現代思想」(青土社、2004)。
タイトル「ことばの哲学者」。
- 作者: ウィトゲンシュタイン,野矢茂樹
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2003/08/20
- メディア: 文庫
- 購入: 29人 クリック: 278回
- この商品を含むブログ (205件) を見る
- 作者: ルートヴィヒヴィトゲンシュタイン,木村洋平
- 出版社/メーカー: 社会評論社
- 発売日: 2007/01
- メディア: 単行本
- クリック: 27回
- この商品を含むブログ (9件) を見る
(文中敬称略)